【実験室レポート】秋は集中の季節!鉛筆、ボールペン、サインペンなど筆記具の書き心地と摩擦の関係を「大披露」!

目次

初秋の候をいかがお過ごしでしょうか?

 秋晴の候、皆様いかがお過ごしでしょうか? 秋と言えば「スポーツの秋」、「読書の秋」、「芸術の秋」、そして「食欲の秋」と秋の代名詞は沢山ありますね。過ごしやすい気候で、何かに取り組むにはうってつけの時期である事は間違いありません。

 「実験室レポート」前号ではお家時間を楽しくする“おいしい生クリームのヒミツ”をご紹介しましたが、本号では「芸術の秋」に相応しい主要な筆記具に注目したいと思います。

書き心地が良いと筆も踊る

 最近はパソコンや携帯で書き物をする方が多いので、いざ筆記具で何かを記すとなると心なしか緊張し、筆の滑りが悪くなってしまう方も多いのではないでしょうか? そんな時の心強い味方が、書き心地の良い筆記具ですよね。滑らかな筆記具さえあれば筆も踊り文字も進むのではないでしょうか?

 ところで皆さんは筆記具に関しては何派ですか? 一口に筆記具と言ってもボールペン、インクペン、サインペン、シャーペン、鉛筆、毛筆など多様な種類があります。リモート勤務の普及で、最近では更に新しい様々な筆記具が市場に導入されています。こうした筆記具の決め手は色々あると思いますが、やはり中でも“書き心地”を重視される方は多いと思います。

 ただ一口に“書き心地”と言っても、「握りやすさ」、「性能」、「インクの種類」、「芯の硬度」など様々な要素が影響します。皆さんにとって書き心地の良い筆記具を選択できるように、今回の「実験室レポート」では、代表的な筆記具と紙との摩擦を科学的に解明する事によって、摩擦と書き心地の関係を追及してゆきます。

筆記具の書き心地と摩擦の関係

 紙に文字を書く際に、「あたかも滑るような書き心地」もあれば、「しっかりと文字を刻むような書き心地」もありますね。こうした感覚を起こしている原因は、筆記具の先端(芯やボールなど)と紙が接触し、移動する際に生じる摩擦力なのです。

 従って、筆記具が紙を移動する際に(即ち文字を記す際に)生じる摩擦を実験により科学的に測定する事で、書き心地のヒミツが解き明かされる筈です。今回、イマダが筆記具によって生じる摩擦の違いから書き心地を証明してゆきたいと思います。

いざ実験へ!

 いよいよ本番の試験の準備に入ります。

筆記用具

筆記用具(いずれも一般市販品)

• ボールペン(コーンチップタイプ、ニードルチップタイプ、シナジーチップタイプ)
• 消せるボールペン
• サインペン
• 鉛筆(硬度HB)
• シャープペンシル(硬度HB)
• 市販の白無地ノート

 次に測定に用いた機器類をご紹介します。

試験機器

 紙などの平面試験体とペンなどの接触子の摩擦力を測定するために、イマダの以下の測定機器を使います。ご興味がある方は是非クリックしてイマダのホームページでご覧ください。

再現性の高い標準タイプデジタルフォースゲージ ZTSシリーズ
横型電動計測スタンド MH2シリーズ
可変ウエイト往復摩擦測定治具 VWF-10N
(角度調整するため、角度可変スティックホルダーVWF-STH-VAも使用) 
スタンドオプションケーブル CB-528

実験準備

ー筆記具サンプルの標記

上述の筆記具サンプルを以下に符号を標記する

• A. ボールペンコーンチップタイプ
• B. ボールペンニードルチップタイプ
• C. ボールペンシナジーチップタイプ
• D. 消せるボールペン
• E. サインペン
• F. シャープペンシル(硬度HB)
• G. 鉛筆(硬度HB)

7種類の筆記用具

ー実験機器の設定

1)各筆記具サンプルをアタッチメントで測定機器にしっかりと固定
2)固定の際には、我々が通常書く状態を再現する為に、筆記具の傾斜角度は60度、筆圧は紙に軽く触れる程度の102gのウエイトを載せ、速度を300mm/minに設定
3)全く同一条件下で、上記7タイプの筆記具を左右70mm移動(=筆記)させ、移動時の摩擦を測定

技術グループの塩野谷職員が機器の設定を行っている模様

実験結果は?

 7つの筆記具を順番的に測定しました。測定の結果と結論の詳細を説明してみましょう。

ボールペンタイプでの比較

 先ず4タイプのボールペンの実験結果を比較してみましょう。

 A、B、C、Dの比較

A (黒線 一)ボールペンコーンチップタイプ
B (赤線 一)ボールペンニードルチップタイプ
C (緑線 一)ボールペンシナジーチップタイプ

D (青線 一)消せるボールペン

*)振れ幅は算術平均粗さ法を参考に、全体の荷重測定値の平均値を基準値とし、その基準値からの差分の平均値を試算した。この数値が低ければ低いほど振れ幅が小さく、凸凹が少ないので、滑らかな書き味を示唆していると考えられる。

4タイプのボールペンの実験結果のグラフ
4タイプのボールペンの実験結果

 上記グラフの読み方ですが、Y軸(縦軸:Force(N))の荷重値が小さく(=即ち、それにより計算した平均動摩擦係数1)が小さく)、同時に振れ幅2)が小さい(=それぞれの色別の線の上下の触れる大きさ)ボールペンタイプの方が、書き味は滑らかと考える事ができます。

 今回の結果では、コーンチップタイプボールペン(黒線)が最も滑らかで、次にボールペンニードルチップタイプ(赤線)、ボールペンシナジーチップタイプ(緑線)、消せるボールペン(青線)の順に滑らかさが減ってゆく事が明らかになりました。

 実際の場面では、筆記用具のチップとインクの組合せが摩擦に影響するので、一般的なボールペンについて必ずしもコーンチップタイプが最も滑らかとは言えない事も、ご理解ください。

筆記具タイプでの比較

 次に4タイプの筆記具の実験結果を比較してみましょう。

 A、E、F、Gの比較

A (黒線 一)ボールペンコーンチップタイプ
E (赤線 一)サインペン
F (緑線 一)シャープペンシル(硬度HB)

G (青線 一)鉛筆(硬度HB)

4タイプの筆記具の実験結果のグラフ
4タイプの筆記具の実験結果

 グラフの読み方は上記と同様です。今回の結果では、ボールペンコーンチップタイプ(黒線)が最も滑らかで、次に鉛筆(青線)、シャープペンシル(緑線)、サインペン(赤線)の順に滑らかさが減ってゆく事が明らかになりました。

 異なるチープタイプの4種類のボールペンの中、最も滑らかなコーンチープタイプと比較したので、一般的な筆記具間の比較でボールペンが最も滑らかとは言えない事も、ご理解ください。

*補足 各筆記具の試験の模様

A.ボールペンコーンチップタイプ

 コーンチップはボールペンの中でも一般的で、円錐型をしており高筆圧にも耐える安定感があるのが特徴

 参考:趣味分CLUB “ボールペンの基礎”を参照:http://shumibun.jp/basic/detail/528/

B.ボールペンニードルチップタイプ

 ニードルチップはボールペンの中でも一般的で、円錐型をしており高筆圧にも耐える安定感があるのが特徴。

 参考:趣味分CLUB “ボールペンの基礎”を参照:http://shumibun.jp/basic/detail/528/

C. ボールペンシナジーチップタイプ

 シナジーチープはPILOTが新開発したチープタイプで、コーンとニードルを合わせた様な形です

 参考:手帳に小さく書きたい人の『激細ボールペン比較』ペン先の形状について:https://www.wakibungu.com/wct/gekibosobp/

D. 消せるボールペン

E. サインペン

F. シャープペンシル(硬度HB)

G. 鉛筆(硬度HB)

次号以降のちょっとだけ予告

 いかがでしたか皆さん? 「なるほど納得」という意見もあれば、「早速こちらの筆記具を試し書きしてみようかな」と感じられた方もおられると思います。筆も進む爽やかな秋の一日を充実させてくれる筆記具の選択に少しでもお役に立てれば嬉しくと思います。

 イマダの「実験室レポート」では、これからも「何でも測定できることに挑戦してゆきたい」と考えています。もし「こんなもの測れるかな?」というアイデアがあれば、身近なものでも難しいサンプルでも是非ご連絡ください!イマダ社員が測定技術を駆使して、あっと驚く結果を皆様にご紹介してゆきたいと思います。是非ご提案お待ちしております!

 

※サインペンはぺんてる社の登録商品。本稿ではフェルトペンなど一般的名称として使用。

企画制作:技術G 塩野谷、映像G 周、営業企画G 小林、鄧

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次