でんぷん糊は化学糊を超えるか!?高校生が自作し挑戦!

イマダでは社会貢献活動の一環として、小中高校生の皆さんの自由研究のサポートに機器の貸し出しを行っています。今回は先日機器を貸し出した小松高校の皆さんから実験レポートをいただいたので、こちらでご紹介したいと思います。

目次

貼り直しできる糊がほしい!

「間違ってプリント貼ってせっかくのノートが台無しになっちゃった。。簡単にはがせる糊があればいいのに。。」そんな思いから、今回小松高校の生徒さんは耐久力が高くかつ後から剥がせるという特性を持った糊の研究を決めたそうです。糊の材質として注目したのはでんぷん。でんぷんには水と一緒に加熱することで分子の並びが不規則になり糊上に柔らかくなるα化と、その後水分が抜けて硬くなるβ化という作用があり、その性質を使って目指す糊の開発が始まりました。まずは耐久力=剥がすのに力が必要、ということで自作の糊の剥離力を測定しようといろいろ探していたところ、イマダに連絡をいただいたのが経緯です。

【でんぷん濃度の異なる糊達】

でんぷん濃度が上がればしっかり貼れる?

でんぷん糊の質量パーセント濃度が上がるほど剥離力は高くなるのではないか、という仮説の下、生徒の皆さんはじゃがいもから作られた片栗粉と水を透明になるまで熱し、でんぷん濃度が3、6、9、12、13、14、15、18%となる糊を作りました。

試験サンプルは自作した糊を方眼紙に貼って準備します。まずは方眼紙を5マス分切り出し、線に合わせて90度に折り曲げます。方眼紙の2マス分に糊を薄く塗り、方眼紙同士を接着。そして、貼り付けた方眼紙をアクリル板で挟み、5分間重りを乗せ加圧した後、風通しの良い場所で一日放置して作成しました。(正確な測定のため、自作サンプルの諸条件も一定にされていて素晴らしいです!)。

【自作サンプル】

サンプルの準備ができたらいよいよ実験です。フォースゲージと試験スタンド両方にフィルムチャックをつけ、サンプルを上下でつかんで引っ張る「T型剥離試験」と呼ばれる方法ではがれきるまでの剥離力を計測します。以前ばねばかりを使って剥離力を測定しようとしたところ、引っ張る速度が安定せず適切な測定値が取れなかった経験を活かし、スタンドの試験スピードも一定にして測定を行いました。

【測定イメージ】

サンプルごとに個体差が出ることを考慮し、糊のでんぷん濃度ごとに10回測定。平均値を箱ひげ図にして中央値を比較しました。

ポイントは糊の粘性と浸透率

事前の予想に反し、12%のでんぷん濃度の糊が平均値・中央値共に高く、最も剥離力が強い結果となりました。12%から13%で急激に減少した剥離力は18%の糊でも大きくなりませんでした。この結果を受け、学生さんたちは、糊の粘性と浸透率に着目。予備実験よりでんぷん濃度が上昇するに伴って、粘性が急激に大きくなること、また、先行研究より粘性が高くなるほど浸透率が低下することが分かっていたため、剥離力が減少した原因はでんぷん濃度が上昇したことに伴い、粘性が高くなり紙に糊が浸透しづらくなったためとの結論に至りました。

なお上記表にはありませんでしたが、市販の糊も同様の方法で剥離力を測定したところ、最も剥離力の高かった12%のでんぷん濃度の糊の平均剥離力が5.58Nに対し、比較対象の市販の糊の平均剥離力が3.05Nということで、まずは市販の糊より耐久力の高い糊の試作に成功されたようです。おめでとうございます!


以上が小松高校の皆さんより共有いただいた測定内容です。元々いろいろな測定をご経験されているのか、打ち合わせの時から測定の理解も早く、貸し出した測定機器もスムーズにお使いいただけたようでした。小松高校の学生の皆さん、実験のレポートご送付どうもありがとうございました。

このように、ご自身の自由研究に荷重測定器を使ってみたい、という学生さんは、こちらよりお問い合わせください。イマダは、皆さんの「なぜ?」を科学的に解決するお手伝いをいたします☺

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