引張試験に使うチャック治具の選び方(強度試験、破断試験)

引張試験用のチャック治具を購入しようとして気が付くのは、非常に多くの種類があるということです。実際、治具選びをする際には、さまざまな要素から検討をする必要があります。「どうやって選べばいいの?」と疑問をもつあなたに、この記事ではチャック治具を選ぶ際のポイントを紹介します。

  • チャック治具の選定基準は、「測定物のサイズ」「力の大きさ」「測定物の性質」です。
  • 治具の「開き幅」「口幅」「使用最大荷重値」「構造」「歯の形状」を確認しましょう。
目次

測定物のサイズから選ぶ

チャック治具を選ぶとき、もっとも大切なことは、測定物の厚みよりも開き幅が大きい治具を選ぶことです。測定物の厚みに対して、チャック治具の最大開き幅が小さい場合には、当然測定物を掴むことはできません*1

また、治具の口幅(歯の幅)も大切です。測定物の幅に対して口幅が狭い場合には、負荷に偏りが起きるため、正確な強度を得られない恐れがあります。規格など、特別な理由がない場合には、測定物の幅よりも口幅が広い治具を選ぶようにしましょう。

基本的には測定物に対して口幅が大きくても問題はありません。しかし、測定内容によっては、口幅が大きいことがネックになる場合もあるので注意が必要です。たとえば、歯ブラシの毛を1本だけ引っ張りたいという場合、口幅が広い治具ではセッティングが非常に困難です。また口幅が広くなると、掴み位置を中心に合わせることが難しくなります。

● 測定物の厚みよりも開き幅が大きい治具を選ぶ
● 測定物の幅よりも口幅が広い治具を選ぶ
● 口幅が大きいことがネックになる場合もある

*1 製品によっては、測定可能なサンプル厚が開き幅より狭い場合があります。詳しくは各製品の仕様書をご確認ください。

測定する力の大きさから選ぶ

「測定する力の大きさ」と「チャック治具の使用最大荷重値*2」にも目を向ける必要があります。使用最大荷重値よりも大きな力の測定は、治具の破損や測定器の故障などの原因となるので、絶対にお薦めをしません。特に破断試験では、瞬間的に大きな負荷が発生するケースも多く、予想荷重値に対して多少余裕を持った使用最大荷重値の治具を選ぶことをお薦めします。

▲チャック治具の使用最大荷重値と重量例

一方で、使用最大荷重値の大きな治具は、重量も大きくなる傾向があります。測定器のレンジに対して重すぎる治具は、測定器への負担となります。イマダでは、測定器に取り付ける治具は、測定器レンジの10%以内の重さであることを推奨しています。

● 予想荷重値よりも使用最大荷重値が大きい治具を選ぶ
● 重さが測定器レンジの10%以内の治具を選ぶ

*2 使用最大荷重値とは、負荷することができる荷重値の上限です。使用最大荷重値を超える負荷は、変形や破損の原因となります。

測定物の性質から選ぶ

ここまでで治具の選択肢は大きく減らすことができました。最後に確認をするのは測定物の性質です。たとえば、次のような性質を持つ測定物では、使用する治具にも注意が必要です。

  • 薄く変形しやすい(柔らかい金属片、ラバーシートなど)
  • 硬く滑りやすい(ステンレスなど)
  • 歯の食いこみで裂けやすい(セロハン、アルミホイルなど)

[薄く変形しやすい]

チカラが加わると薄く伸びるサンプルを測定する場合には、「クサビ構造」や「パンタグラフ構造」「カム構造」を持ったチャックがお薦めです。これらの構造を持ったチャック治具は、チカラが加わると自動的に締付け力が高まります。そのため、測定物が薄く伸びても強い力で掴みつづけることが可能です。なお、試験開始時の掴み力が弱いため、硬く滑りやすいサンプルの測定には向きませんのでご注意ください。

▲左から順に「クサビチャック」「パンタグラフチャック」「カムチャック」

[硬く滑りやすい]

ステンレスなどの硬い測定物では、歯がしっかりと食い込まず、試験時にチャックが滑ってしまう場合があります。そのような場合には、ねじ式のチャックがお薦めです。ねじ式のチャックは、測定物へ歯をしっかりと食いこませることができ、滑りを軽減してくれます。また、サンプルが薄くて硬い場合には、片側ウレタン歯のねじ式チャックがお薦めです。

▲ギザ歯のフラットチャック(左)、片ウレタン歯のねじ式フィルムチャック(右)

[歯の食いこみで裂けやすい]

セロハンのような裂けやすい測定物は、ギザ歯のチャックで掴むと歯切れ(チャック切れ)*3が起こりやすいです。そのような測定物では、平歯やウレタン歯のチャック治具がお薦めです。また、ローレット加工が施された歯は、歯切れリスクを低減しつつ、滑り止めの効果も持ちます。

▲平歯のフラットチャック(左)、片ウレタン歯のレバー式フィルムチャック(右)

● 薄く変形しやすい測定物には、自己締付け構造を持った治具を選ぶ
● 硬く滑りやすい測定物には、ねじ式の治具を選ぶ
● チャック切れしやすい測定物には、平歯やウレタン歯の治具を選ぶ

*3 歯切れ(チャック切れ)とは、チャック部の付近で測定物が破断してしまう現象です。原因としては、歯の圧力による測定物の変形があげられます。歯切れが起こりやすい測定物では、本来の破断強度に達する前に歯切れが起こり、正確な測定ができない場合があります。

測定事例を参考にするのもひとつの手

ここまで「測定物のサイズ」「力の大きさ」「測定物の性質」と治具選びの基準をあげてきました。はたして治具選びの糸口は見つかったでしょうか?数ある治具のなかから、最適な治具を見つけ出すのは非常に骨が折れる作業です。まずは、上記の切り口から、選択肢を絞っていくとスムーズに進められるかと思います。

なお、測定物によっては、下の画像にあるように専用治具が用意されている場合もあります。適切なチャック治具が見つからない場合には、測定器メーカーの治具ラインナップから、専用治具やフック治具を見てみると意外な発見があるかもしません。

株式会社イマダでは、チャック治具をはじめ、さまざまな引張試験用治具を使った測定事例動画をHPで公開しています。測定したいサンプルと近い測定事例が見つかれば、治具選びの大きな助けになると思います。ぜひ下記のリンクよりチェックしてみてくださいね。

引張試験の測定事例動画集(株式会社イマダ 製品・サービスサイト)>

備考:引張試験用チャック治具一覧(抜粋)*4

名 称フィルムチャックフラットチャックファインポイントチャック
最大開き幅やや狭い (0.2-2mm)広い (10-30mm)狭い (0.5mm)
口 幅標準-広い(20-40mm)標準 (20-29mm)狭い (1mm)
使用最大荷重値250-500N1000-5000N50-100N
備 考フィルムなど薄いサンプルを掴むのに最適。軽量タイプ、ねじ式、レバー式など種類が豊富。薄いものから厚いものまで掴むことができる。サンプルに応じて歯が交換できるタイプも。狭いスペースでの測定や糸状のサンプルを掴むのに最適。
 
名 称パンタグラフチャッククサビチャックカムチャック
最大開き幅やや広い (6-10mm)*5標準 (2-8mm)標準 (2-4mm)
口 幅標準-広い (5-30mm)標準 (9.8-23.8mm)ローラー幅:広い (30-50mm)
使用最大荷重値500-2500N500-5000N500-2000N
備 考自己締付けタイプ。洗濯ばさみのような使い勝手で、簡単に測定物を掴むことが可能。自己締付けタイプ。レバー開閉式のため、多少与圧を加えることが可能。自己締付けタイプ。ローラー幅が広く、短冊状の薄いサンプルを掴むのに最適
 
名 称ピンチャックジャコボスチャックバイス治具
最大開き幅狭い (φ3.2mm)標準 (φ13mm)*6広い (35-66mm)
口 幅広い (38-62mm)
使用最大荷重値150N1000~5000N250-2000N
備 考細い針金状のサンプルを掴むのに最適。圧縮試験にも使用可能。丸棒状の測定物を掴むのに最適。チャック力が強く、滑りが発生しにくいのが特徴。計測スタンド側に取り付けて使用する引張試験用治具。ねじ式で強固に掴むことが可能。

*4 株式会社イマダ取扱製品(2024年3月現在)からの抜粋です。

*5 最大測定可能厚。開き幅は15-20mm。

*6 最小開き幅はφ0.5-2.0mm。

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