実験コラム 「連日の猛暑日に荷重測定は要注意?数値ではっきりわかる、荷重測定結果と温度の関係」

梅雨も明け、夏本番の猛暑が続く毎日ですが、皆さま熱中症対策は安全でしょうか?

多少の気温の変化でも人の感じ方が変わるように、荷重測定のサンプルにおいても温度の違いが測定結果に与える影響は無視できないものがあります。

なんとなく、温度が低くなると硬くなったり、逆に温度が高くなると破断しやすくなったりするのでは、とイメージはできても品質上問題となるほど特性が変わっているのか判断するには、やはり測定して数字で見ることが必要になります。 今回の記事では、温度を-40℃~150℃の間で自由に調整できる恒温槽を取り付けた測定器を使いながら、いろいろなサンプルを温度を変えて測定し、同じ試験を行ってもどう結果が変わるのか実際に比較してみたいと思います!

目次

荷重測定における温度の影響とは?

荷重測定の各種試験において、温度が試験条件に設定されることはよくあります。例えば、異なる温度環境での接着剤の粘着力の違いを見たり、実際の使用環境を想定しての素材の耐久性の変化を観察したりすることが可能です。またJIS K7191-2:2015 「プラスチック-荷重たわみ温度の求め方」のように、数種類の異なる荷重値をサンプルにかけ、規定量たわんだ時の温度を確認するような測定もあります。

では、ここから実際にイマダの実験室で測定した各サンプルの異なる温度下での特性変化を見てみましょう。

異なる温度環境で特性変化の検証―両面テープの粘着力

1事例目は、両面テープのタック試験で粘着力を測ります。10㎜四方に切った紙製の両面テープを50Nの荷重で張り付けた後、毎分10㎜のスピードで上側の治具を引き上げていきます。

恒温槽 両面テープ

測定は、サンプルの両面テープに定められた使用可能な温度範囲の中から、-10℃、0℃、20℃、50℃の4つを選び、恒温槽内の温度に設定。治具からテープが離れるまでにかかる荷重値(=粘着力)を縦軸に、それまでに治具を引き上げた距離を横軸にとったグラフであらわした各結果は以下の通りになりました。

温度と粘着力が見事に反比例しているのが見て取れます。また、50℃のグラフに顕著に表れていますが、温度が高くなるにつれ完全に治具からテープが離れるまでの時間が長くなるのは、テープの接着剤の状態が反映されていると考えられます。

異なる温度環境で特性変化の検証―輪ゴムの引張力

続いての事例は、輪ゴムの引張力です。1.1㎜幅の輪ゴムをフック状の治具に引っ掛けて、荷重が2Nになるまで、毎分600㎜の速度で引っ張り、2Nに達した時の輪ゴムの伸び量を、温度別にくらべます。

サンプルの輪ゴムの耐用温度は-40℃~70℃となっているため、0℃を起点に、上は20℃、50℃、70℃、下は-10℃、-25℃、-40℃の計7つの温度で測定をしてみます。今回はすべて2Nに達するまで引っ張るため、縦軸の値は全グラフ共通で、横軸の変位値がそれまでに伸びた量になります。結果は以下の通りになりました。

(高温度帯)

(低温度帯)

高温度帯では全記録で150㎜以上伸びたのに対し、低温度帯では2Nで引っ張ったときの伸び量にばらつきがより見られます。ただ、特に実際に使われることの多い温度帯と思われる-10℃~50℃での伸び量に大きな違いがないことから、実用的な品質の安定感がよいことがうかがえます。

異なる温度環境で特性変化の検証―樹脂プレート3点折り曲げ力

最後は2種類(A、B)の樹脂プレートの3点折り曲げ試験です。幅120㎜、奥行50㎜、厚さ5㎜にそろえた樹脂プレートを毎分10㎜のスピードで、かかる荷重が100Nを超えるまで押し続け、その時のたわみ具合を比較します。

サンプルAの耐用温度は-100℃~120℃、サンプルBの耐用温度は-40℃~120℃のため、この測定でも0℃を基準に20℃、50℃、100℃の高温度帯と-40℃、-25度、-10℃の低温度帯を含む7つの温度で測定します。輪ゴムの事例同様、縦軸の荷重値は100Nを超えるまでとなっており、横軸の変位値でたわみ量の差が判別できます。

(高温度帯)

(低温度帯)

結果は意外にも、耐用温度に差があった低温度帯ではサンプルA,Bともに異なる温度でのたわみ量の差がほとんどなかった一方、高温度帯でのたわみ量のばらつきは両サンプルで大きく異なりました。サンプルAでは耐用温度上限に違い100℃であっても、比較的安定した品質を保っていたのに対し、サンプルBは50℃くらいからたわみ量が増え始め、100℃では0℃の時と比べ8倍近いたわみ量となり、温度の影響を大きく受ける素材であることがわかりました。

まとめ

複数のサンプルを使って測定することで、改めて温度のサンプル特性への影響を理解できた事例となりました。3事例目にあるように、一見似たようなサンプルであっても、その特性が大きく異なったり、素材によって耐用温度内であっても品質にばらつきが出始める温度帯があったりと、色々と新しい発見もありました。

恒温槽を使っての自社サンプルの測定にご興味ある方は、ぜひこちらからご連絡ください。

https://www.forcegauge.net/service/sample_testing

◎もしも、炎天下で測定されることがある場合は、体調管理・安全対策はもちろん、測定結果にもご留意ください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次