子供の事故を防ぐために 事故の事例と荷重測定ができる事

筆者は2人の子供を持つ母親です。今となっては赤ちゃんを寝かせるための布団は硬めのものでないといけないとわかっていますが、子供が生まれるまでは、「赤ちゃんが柔らかめの布団で窒息して命を落としてしまう」なんて想像もできませんでした。産前の母親教室でそのことを学んだときは、「赤ちゃんとはなんてか弱い生き物なんだろう」と驚いた記憶があります。少し大きくなってからも、何でも口に入れるなど、何をしでかすかわからないので、事故といつも隣り合わせの感覚がありました。

かわいい子供達を不慮の事故から守るために、大人たちにできる事があると思います。1つは、個人として実際の事故の事例を知る事。どんな事例があるかを知っておけば、自分や自分の周りにいる子供達に対して予防策を取ることができると思います。一方で、製造業・企業という大きい単位でできることがあると思います。製品自体に安全対策が取られていれば、母親・父親など赤ちゃんをお世話する個人で注意するだけよりもセーフティーネットが強化され、より事故が防げるはずです。

ここでは、国が発表している子供の事故の例を抜粋し、どのような事例があるかを紹介するとともに、個人として、または製造業としてどのようなことができるかという事を荷重測定の観点から紹介します。個人の立場から、製造業の立場から、どんな立場・視点からでも良いので、事故を防ぐためにできることを知って頂ければ、そしてそれが子供たちを守ることにつながれば幸いです。

目次

就寝時の窒息事故

就寝時の窒息事故は、乳児の代表的な死因の一つです。うつ伏せで寝て、顔が柔らかい寝具に埋もれてしまう事が原因です。まずは、子ども家庭庁が提言する予防策を見てみましょう。

子ども家庭庁が提言する予防策:
1.大人用のベッドではなく、ベビーベッドに寝かせ硬めの敷布団(マットレス)を使用すること
2.1歳になるまでは、仰向けに寝かせること

硬めの布団とは、幼児の体重でも変形が少ない状態を指します。それを踏まえて、個人と企業ができる事はどのような事でしょうか?

事故を防ぐために個人ができる事:
家で赤ちゃんを寝かせる際には、上記予防策の1に気を付けている方がほとんどだと思いますが、外出先などで赤ちゃんを少し横になって寝かせるという事もあると思います。その際には、赤ちゃんを寝かした際に、その場所が沈み込んで大きく変形している場合は、そこで寝かすことは避けたほうが良いと言えます

事故を防ぐために企業ができる事:
ベビー布団のメーカーであれば、布団の硬さを測定して品質管理することができます
想定される荷重(重量)に対してどの程度布団が沈み込むのかを測定することでデータによる硬さの判断基準を作ることが可能になります。

下記は緩衝材の反発力を測定している動画ですが、布団の試験にも応用できます。(布団の完成品そのままだと測定するには大きすぎるので、試験片を切り出してもらう必要があります。)
緩衝材の反発力測定:https://www.forcegauge.net/solution/industry/packaging_containers_paper/48526

試験片をもっと大きいサイズで測定したいという場合は、下記のように枕をそのままの大きさで反発力を測定する例もありますのでご参照ください。
枕の反発力測定:https://www.forcegauge.net/solution/industry/textile_apparel/68223  

おもちゃなどの小さな物で窒息

子供は何でも口に入れたがるので、誤飲に気を配る親は多いと思いますが、改めて子ども家庭庁が提言する予防策を見てみましょう。

子ども家庭庁が提言する予防策:
1.年上のこどものおもちゃには、小さな部品が含まれていることがあります。対象年齢になるまでは、こどもの手の届かない所に保管し、遊ばせないようにしましょう。
2.おもちゃの購入時や利用時は、商品の対象年齢を必ず守りましょう。

上記に「商品の対象年齢を必ず守りましょう」とありますが、さらに提言するならば、赤ちゃん用のおもちゃも部品などが取れないようになっているか?という事を個人と企業で確認することが大事だと考えます

というのは、赤ちゃん用のおもちゃでも、おもちゃの一部を噛んで引っ張るという事を繰り返すうちに、だんだん取れかかってくる可能性があるからです。

事故を防ぐために個人ができる事
家にあるおもちゃの部品や飾りが取れかかっていないかという事を確認することができると思います。確認するポイントは例えば、布製品の場合は飾りが縫いつけてあるところにほつれなどは無いか、プラスチック製品の場合は、接続部の緩みなどが無いかなど。

事故を防ぐために企業ができる事
おもちゃのメーカーであれば、部品や飾りを引っ張っても部品が取れない十分な強度があるかを試験し、品質管理することができます
試験の方法としては、予め決めた引張荷重値をかけて部品が取れないかを確認する方法や、逆に部品が取れるまで引っ張った際の荷重値を確認するなどの方法があります。

赤ちゃんが口にするものとして、他には衣服のボタンや装飾品なども挙げられます。下記の動画は衣服ボタンの引張強度の試験例です。実際に子供服メーカーで行われている試験となります。ご参考下さい。

ボタン引張強度測定:https://www.forcegauge.net/solution/force/tension_test/67182 

ブラインドやカーテンのひもなどによる窒息

布団や小さいものだけでなく、ブラインドやカーテンのひもが首に絡まり窒息事故が起きる恐れもあります。

筆者は会社の新社屋ができたばかりのころ、ある部屋のブラインドを開ける際に、ひもの結合部品(セーフティジョイント)がパカッと外れて、真新しいブラインドを壊してしまったのかと焦ってしまったことがありました。焦ったのと同時に、なんでそこまで強く引っ張ったわけではないのに取れてしまうの?と疑問も抱きました。それはひもで子供が窒息しないように一定の力がかかると外れるようになっているというものだという事を同僚から聞かされ、「なるほど!」と納得したことを覚えています。

事故を防ぐために個人ができる事:
最近では先述のように安全対策が取られたひもを採用しているブラインドも増えてきているように感じます。そのような安全対策が取られた製品を選ぶのも予防策の一つですね。実際に、子ども家庭庁も「安全性の高い商品を選びましょう」という提言をしています。

子ども家庭庁が提言する予防策:
1.ひもが首に絡まらないように、子供の手の届かない所にまとめましょう
2.ソファなど、踏み台になる物をひもの近くに設置しないように気をつけましょう
3.ひも部分がないなどの安全性の高い商品を選びましょう

事故を防ぐために企業ができる事
ブラインドの安全機能としてはセーフティージョイントのような一定以上の引張力でつなぎ目が外れるようなものがあります。窒息事故を防ぐ目的であれば、幼児の体重より小さな力でつなぎ目が外れなければなりません。幼児が走って引っかかった場合、ゆっくりの場合共につなぎ目が確実に外れるかを客観的に検証する必要があります。
例えば、フォースゲージと呼ばれる測定器でひもを引っ張り、どのくらいの荷重(重量)がかかったらセーフティージョイントが外れるかなどを数値化して確認するのも一つの検証方法です。

最後に

今回は「窒息・誤飲事故|こども家庭庁 (cfa.go.jp)」から、3点の例を挙げ、荷重測定の観点からどのように事故を防ぐことができるかというお話しさせて頂きました。一つでも「なるほど、気をつけよう」「参考になった」と思って頂ける点があったなら幸いです。そして、幼い子供たちの不慮の事故が無くなることを願ってやみません。

引用: 窒息・誤飲事故|こども家庭庁 (cfa.go.jp)

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