ゲルテープの粘着力は本当に回復する?荷重測定で調べてみた

汚れが付着しても洗えば粘着力が回復すると人気の両面ゲルテープ。「本当に粘着力は回復をするのだろうか?」と疑問を持つあなたに、この記事では荷重測定を使って調査した結果を紹介します。

  • 「タック試験」と「せん断試験」によって、粘着力の測定をおこないました。
  • ホコリ汚れ、油汚れともに、洗い流すことで70~90%の粘着力を維持できました。
目次

粘着力を紙製両面テープと比較 ―タック試験とせん断試験

粘着力の回復性能を調べる前に、新品状態での粘着力の測定をおこないました。採用した測定方法は、異なる引張方向で粘着力を測定するこちらの2つです。

  • タック試験:粘着面に対して垂直方向にチカラを加えた際の粘着力を測定
  • せん断試験:粘着面に対して水平方向にチカラを加えた際の粘着力を測定

[タック試験の流れ]
1.20×20mmにカットした両面テープを、計測スタンドに貼り付けます。
2.フォースゲージを使って20N(約2kg)の力で押し込み、5秒間キープ。
3.そのまま上昇させることで、上昇への抵抗値を粘着力として測定します。

[せん断試験の流れ]
1.20×20mmにカットした両面テープを、樹脂プレートに貼り付けます。
2.両面テープを挟むように樹脂プレートを重ね、20Nの重りを乗せます(10秒間)。
3.重りを取り除き、試験機にセットします。
4,樹脂プレートが上下に引っ張られ、抵抗値が粘着として測定されます。

今回は3種類のサンプル(強粘着ゲルテープ/弱粘着ゲルテープ/紙製両面テープ)で測定をおこないました。測定の結果は、下の表のとおりです。

※Nはチカラの単位です。1Nは、0.1kg程度の重りがぶら下がっている状態の負荷とおおよそ同等です。

タック試験の結果からは、紙製両面テープと比べて、ゲルテープに粘着力の優位性が見られます。たとえば、机の裏側にボックスなどを貼り付けるといった用途では、ゲルテープが活躍しそうです。

せん断試験では、紙製両面テープに粘着力の優位性が見られます。ですが、タック試験ほどサンプル間に大きな差異はなく、用途に応じて使い分けることができそうです。

粘着力の回復力検証 ホコリ編

新品状態の粘着力を測定したところで、続いては粘着力の回復性について検証をします。まずはホコリ汚れでの検証です。今回は、繊維ボコリを想定して検証をおこないました。

[検証の流れ]
1.ポリエステル製のフェルト生地にゲルテープを貼り付け、繊維を付着させます。
2.指で粘着力の低下を確認した後、ぬるま湯で繊維を洗い流します。
3.水気を切って乾燥させ、粘着力の測定をおこないます。
4.新品状態での粘着力に対する、粘着力の保持率を計算します。

▲繊維を付けたゲルテープと水洗いをしたイメージ。濡れることで粘着力が落ち、簡単に繊維が取れました。

なお検証では、一度「繊維の付着と水洗い、測定」をした後に、つづけて同じサンプルで「繊維の付着と水洗い、測定」をおこないました。これは、繰り返し使用時の回復性についても検証するためです。測定の結果は次の表のとおりです。

[強粘着ゲルテープの測定結果]

タック試験せん断試験
新品状態(基準値)69.9N36.7N
繊維を付着させて水洗い(1回目)60.0N (85.8%)30.9N (84.2%)
繊維を付着させて水洗い(2回目)59.2N (84.7%)31.8N (86.6%)

[弱粘着ゲルテープの測定結果]

タック試験せん断試験
新品状態(基準値)47.1N65.1N
繊維を付着させて水洗い(1回目)39.8N (84.5%)59.1N (90.8%)
繊維を付着させて水洗い(2回目)42.7N (90.7%)60.6N (93.0%)

測定の結果、繊維ボコリの汚れであれば、新品状態の85~90%程度の粘着力まで回復できることがわかりました。乾燥時に、空気中に浮遊しているホコリが付着することを考えると、非常に高い数値まで回復していると言えるのではないでしょうか。

なお、十分に乾燥をさせないままに測定をおこなうと、非常に低い数値が測定されました。粘着力の回復には、水洗い後、しっかりと乾かすことが必要なようです。

粘着力の回復力検証 アブラ編

粘着力低下の大きな要因となる油(アブラ)についても、検証をおこないました。今回は、台所での使用を想定して、サラダ油を使用します。

[検証の流れ]
1.サラダ油をゲルテープ全体に付着させます。
2.指で粘着力の低下を確認した後、ぬるま湯で洗い流します。
3.水気を切って乾燥させ、粘着力の測定をおこないます。
4.新品状態での粘着力に対する、粘着力の保持率を計算します。

ホコリ編と同様に、サラダ油でも連続して「油の付着、水洗い、測定」を繰り返すことで、繰り返し使用時の回復性について検証しています。測定の結果は次の表のとおりです。

[強粘着ゲルテープの測定結果]

タック試験せん断試験
新品状態(基準値)69.9N36.7N
サラダ油を付着させて水洗い(1回目)54.7N (78.3%)26.6N (72.5%)
サラダ油を付着させて水洗い(2回目)54.2N (77.5%)25.4N (69.2%)

[弱粘着ゲルテープの測定結果]

タック試験せん断試験
新品状態(基準値)47.1N65.1N
サラダ油を付着させて水洗い(1回目)33.9N (71.2%)55.2N (84.8%)
サラダ油を付着させて水洗い(2回目)35.8N (76.0%)52.3N (80.3%)

測定の結果、サラダ油であれば、新品状態の70~80%程度の粘着力まで回復できることがわかりました。繊維ボコリと比較して回復性が低いのは、水と油の親和性の低さも影響しているのかもしれません。それでも、両面テープとして機能する粘着力まで回復しています。用途次第では、十分に貼り直して使い続けることができそうです。

※食器用洗剤を使用して洗ってみたところ、90%程度まで粘着力が回復をしました。(洗剤の使用を避けるよう注意書きがある製品もあります。洗浄方法は各製品の仕様上の注意に従っておこなうことをお勧めします。)

まとめ ―ゲルテープの粘着力を測定した結果

今回、ゲルテープの粘着力を測定した結果、以下のことがわかりました。

  • 接着面から垂直方向にチカラがかかる場合に、ゲルテープは強い粘着力を発揮する。
  • 水平方向(スライド方向)への粘着力は、紙製両面テープに優位性がある。
  • 繊維ボコリ、サラダ油が付着した場合、水洗いで新品の70~90%まで粘着力が回復する。

今回の結果は、あくまで使用したサンプルに限った結果ではありますが、ひとつの参考値としてご活用いただければと思います。なお、イマダのHPでは、粘着力や剥離力に関する測定事例動画を多数公開しています。また、Force Channelでも剥離試験に関する記事を公開していますので、関連記事欄からチェックしてみてくださいね。

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