はじめに
イマダでは自社の技術開発にとどまらず、荷重測定に関するさまざまな課題解決を目指し、大学や企業との共同研究にも積極的に取り組んでいます。その一環として、静岡理工科大学との産学連携活動を進めており、「摩擦」をテーマとした共同研究を実施しています。本記事では静岡理工科大学の吉見教授との会談・インタビューを基に、研究の背景や取り組みの内容についてご紹介します。

会談中の吉見教授

共同研究のきっかけ
静岡理工科大学との共同研究が始まったきっかけは、同大学の吉見教授が登壇された講演イベントでした。静岡県産業振興財団が主催する、産学マッチングを目的とした「ラウンドテーブル」という産学交流の場で、吉見教授が研究内容について講演されていました。その講演後、当社社員が教授へ直接お声がけしたことを機に、静岡理工科大学との産学連携が本格的にスタートします。
吉見教授は現在の大学に着任した際、摩擦に関するテーマで学生が興味を持てる卒業研究を行おうと考え、研究室の学生に取り組みたいテーマの候補を挙げてもらいながら議論を重ねておりました。その結果、スマートフォン用ガラスフィルムの触感と指の摩擦の関係に着目した研究を始めることになったそうです。学生30名による触感調査を実施し、材料表面形態との関係を整理したところ、非常に興味深い結果が得られました。これらの知見を踏まえ、指の摩擦力を定量的に測定できれば、研究をさらに深化できると考えるようになり、本共同研究に至りました。
教授プロフィール紹介(経歴・専門分野)
[吉見直人 教授プロフィール]
静岡理工科大学理工学部理工学科機械・航空・ロボット工学系
1988年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了
1988年 ~日本鋼管(株)
2003年 ~JFEスチール(株)
2015年 九州大学大学院工学府博士後期課程修了
2021年 ~現職

吉見教授と地域創成担当の伊藤様
研究者としての歩み
学生時代の卒業論文研究および修士論文研究では、「金属基複合材料の基礎検討」として、高温での固体(セラミックス)と液体(溶融アルミニウム)の濡れ性について研究されています。静滴法を用いて溶融アルミニウムの接触角の変化を測定し、固液界面反応との関係を考察した論文をまとめました。結果を予測しながら研究を進めるプロセスに面白さを感じ、その後は企業に就職して研究所を志望し、研究開発に携わってきました。
取り組まれている研究
静岡理工科大学の研究室(材料表面工学研究室)では、材料表面における機能や特性の発現メカニズムに関する研究を行っています。私たちの生活に身近な「摩擦」に関するテーマに取り組まれており、材料表面の手触り感(触感)と摩擦の関係、ロボットハンドが物体を把持する際の指先素材の摩擦特性、さらに摩擦によって発生する「スティック・スリップ」と呼ばれる振動現象について研究しています。このほか、金属材料の意匠性に関する研究にも取り組まれています。
指の摩擦力・触感に関する研究
本章では、指先でガラスフィルムに触れたときに生じる摩擦の変化と、その違いがどのように触感として感じられるのかについて、私たちが行っている研究を紹介します。
指の摩擦力と触感の測定
「指の摩擦力と触感」は、指先が物体表面に触れた際に生じる摩擦の大きさや変動が、どのように触感として知覚されるかを明らかにするものです。指先の皮膚は柔らかく、指紋を持つため、接触面の状態や押し付ける力によって摩擦力が変化します。この摩擦の変化が、ザラつき・滑らかさ・しっとり感などの触感を生み出す重要な要因となります。本研究ではイマダの摩擦測定装置を用いて、人の指がスマートフォン用ガラスフィルムに触れたときに生じる摩擦力と触感を測定しています。



イマダ測定器が選ばれた理由
装置の機構がシンプルで、操作性も良いとの評価をいただきました。学生の方に実験を担当してもらっておりますが、特に問題なくデータを取得できているとのことです。
研究によって得られた知見
スマートフォン用ガラスフィルムには、大きく分けて2種類の表面特性があります。 1つは、透明性が高く指が「くっつく」ような滑り感をもつグレアガラス。もう1つは、反射やまぶしさを抑え、指触りが「さらさら」しているアンチグレアガラスです。 本研究では、これら2種類のガラス表面上で指を滑らせた際の触感(主観的な滑り感)と摩擦力(客観的な数値)を同時に評価し、両者の違いを定量的に比較することに成功しました。これにより、従来は感覚的に語られることが多かった「指触りの違い」を、科学的根拠に基づいて説明できるようになってきています。

今後の課題と研究展望
指の摩擦力と触感に関する共同研究は、ガラス表面における基礎的な測定から、より応用的な研究へと発展しつつあります。今後は素材の違いや新たな測定方法など、さらに幅広いテーマへ展開できる可能性が見えてきました。
今後の課題
今後の課題として、「粗さの異なるガラス素材の摩擦力評価」、「複数評価者によるガラスの実指摩擦力の検証」、「実指の摩擦係数に近いエラストマー素材の探索」などが挙げられます。
共同研究を通じて見えてきた可能性
ガラスフィルム表面上での指の摩擦力を測定できるようになったことで、今後は様々な材料表面における指の摩擦力と触感の関係について研究を進められると期待しています。
今後取り組みたい研究テーマ
「触感」という機能を付与した新しい表面処理技術の研究や、人の指を模擬したロボットハンドなどの指素材の研究へ発展させていきたいと考えています。
まとめ
本共同研究を通じて、指の摩擦力と触感を科学的に評価するための基盤が整いつつあります。身近でありながら解明が進んでいない「摩擦」や「触感」の領域には、まだ多くの可能性が広がっています。イマダとしても、こうした現象の理解を深めるために、今後も大学や企業との連携を積極的に進め、新たな研究テーマに挑戦していきたいと考えています。
Force Channelでは、今後も引き続き「力の測定」をテーマに、情報発信を行っていきます。今回の記事をきっかけに力の測定に興味を持たれた方は、ぜひ他の記事もあわせてご覧ください。
【参考情報】
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