摩擦試験紹介① 『面と面で接触する摩擦試験』

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滑りやすさ、滑りにくさを測る摩擦試験

皆さんは、摩擦試験という試験をご存じでしょうか?おおまかには、接触している2つの物体を、滑らせるように動かすときに必要な力=摩擦力(摩擦抵抗)を測定する試験なのですが、「適度な力を加えることで動かすことができるか」「一定の力が加わるまでは動かずに耐えることができるか」など、さまざまな目的で実施をされています。たとえば、以下の試験は、実際に企業、研究機関などで実施されている摩擦試験の一例です。

・印刷紙の品質試験

・スマートフォンの保護フィルムの操作性測定

・筆記具の書き心地測定

・潤滑油やグリースの品質試験

・床材の滑り性測定(詳細はこちら)

今回は、これらのなかでも、「印刷紙の摩擦試験」を例に挙げて、面と面の接触による摩擦力を測る試験方法を紹介いたします。紙を対象とした摩擦試験は、製紙業界、包装・パッケージ業界など、多くの業界で幅広く行われています。

なお、摩擦試験と似た言葉で摩耗試験という試験がありますが、摩耗試験は、摩擦による物体表面の破壊を観察する試験です。一定の条件で摩擦を加えた後に、表面状態や脱落して減少した質量などを分析します。摩擦試験、摩耗試験は単体で行われることもありますが、その関係性により、同時に行われるケースも多い試験です。

摩擦力と摩擦係数

具体的な試験の紹介を行う前に、摩擦について簡単に説明します。冒頭にも書いたとおり、摩擦とは、接触している2つの物体を滑らせるように動かすときに、動きを妨げる力(摩擦力)が発生をする現象です。摩擦力の大きさは、物体が静止している状態では、「物体を動かすために加えられている力の大きさ」と同じになりますが、その最大値=最大摩擦力は「物体が持つ滑りにくさの性質」、「接触する物体が接触面から受けている力(垂直抗力)」に影響を受けます。最大摩擦力を超える力を加えるまでは、物体はその場に留まり、最大摩擦力以上の力を加えることで物体は動きはじめます。


※垂直抗力とは、接触面から物体に対して垂直にはたらく抗力を意味します。物体が接触面に力を加えるとき、力を加えた物体側にも同じ大きさの押し返す力(抗力)が発生しています。水平な場所に物体を置いた場合には、物体の質量を力(重力)に換算した値がそのまま垂直抗力となります。

物理学の世界では、以下の関係が成り立つとされています。

「最大摩擦力(N)」=「垂直抗力(N)」×「物体が持つ滑りにくさの性質(係数)」

接触する物体が持つ滑りにくさの性質の係数は、摩擦係数と呼ばれており、以下の式で求めることが可能です。

「摩擦係数」=「最大摩擦力(N)」/「垂直抗力(N)」

たとえば、200gの物体を水平な台の上に置き、水平に物体を押して動き始めた時の力が1.5Nだとすると、「(静止)摩擦係数=1.5/1.96133=0.765(※1kgf=9.80665Nで計算)」であることが求められます。摩擦係数として計算をすることで、サンプルの質量の影響を排除して、滑りにくさの性質を比較することができるというわけです。

ただし現実には、試験速度や接触面積、さらには試験環境(温度、湿度)などによっても摩擦力は影響を受けるため、摩擦係数の比較時には、条件を揃えた試験の結果間で比較を行うことが重要です。また、摩擦係数は接触する2つの物体に対する係数のため、物体Aと物体Bの摩擦係数という考え方をすること、さらには表面状態に影響を受けるため、必ずしも数値が一定ではないことにも注意をする必要があります。

印刷紙の摩擦試験

摩擦について説明をしたところで続いては、実際に企業で行われている摩擦試験「印刷紙の摩擦試験」の紹介です。紙の摩擦試験と聞いてもピンと来ない方もいるかもしれませんが、「印刷時の紙送りへの影響」「積み重ねて置いた時の崩れにくさ」など、さまざまな理由から試験が行われています。紙の摩擦試験には、JIS P 8147; 2010(紙及び板紙−静及び動摩擦係数の測定方法)の規格があり、重なり合う2枚の印刷紙の上にウエイトを置いて滑らせることで、紙同士の摩擦を起こし、摩擦力、摩擦係数を測定します。


上のグラフは、実際に印刷紙同士の摩擦試験を行った結果です。縦軸は摩擦力(N)、横軸は時間(秒)を示します。グラフを見ると、動き始めに大きな摩擦力が発生していることが分かります。一般に摩擦力は、静止状態から動き始める直前に最も大きな力が発生する場合が多く、このときの摩擦力は静止摩擦力(静摩擦力)と呼ばれます。一方で、動き始めた後は、摩擦力は少し下がって安定をした状態で推移をします。つまり、静止時と移動時では、最大摩擦力が異なるというわけです。動いている間の摩擦力は動摩擦力と呼ばれます。

静止摩擦力、動摩擦力を垂直抗力(ウエイトの質量より計算)で除した数値は、静止摩擦係数(静摩擦係数)動摩擦係数と呼ばれ、規格によっては静止摩擦係数と動摩擦係数を測定することが求められます。なお、動摩擦係数の計算は、一定の移動範囲内の平均動摩擦力から求められることが多く、グラフ描画ソフトウェアなどを用いて行うのが一般的です。

試験時の注意点としては、意図的な場合を除き、「同じサンプルで繰り返し測定を行わないこと」などが挙げられます。見た目には変化が見られなくても、サンプルの表面状態が変化することで、測定結果に影響が出る恐れがあるためです。たとえば、下のグラフ、比較表は、紙やすりと合板とで、サンプルを交換せずに複数回摩擦試験を行った結果です。1回目と5回目、10回目では、静摩擦係数、平均動摩擦係数ともに少しずつ小さくなっていることが見て取れます。

紙やすりは非常にわかりやすい例ではありますが、どのようなサンプルでも、程度の差はあれ同じような現象が起こりえます(繰り返すことで摩擦係数が大きくなる場合もあります)。同様に、手の皮脂なども、潤滑油となって摩擦力に影響を与える恐れがあるため、「サンプルの表面に触れないこと」にも注意しなければなりません。なお、第2項でも述べたとおり、試験結果の比較には、条件を揃えた試験の結果を用いることが重要です。

まとめ

さて、今回は紙の摩擦試験を例に挙げ、面と面の接触による摩擦試験を紹介しました。今回紹介した試験は、紙以外にも、プラスチックフィルムやテキスタイルなど、様々なサンプルを対象として行われています。次回は「人口皮膚と化粧用品の摩擦試験」を例に挙げて、面と点の接触による摩擦試験を紹介する予定です。また、フォースチャンネルでは、荷重測定やチカラに関する様々な記事をお届けしています。ぜひ、他の記事もチェックしてみてくださいね。

測定事例動画:紙の摩擦係数試験(JIS P 8147;2010一部準拠)
測定事例動画:包装フィルムの摩擦係数試験(JIS K 7125;1999一部準拠)

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