パッケージの開封性、シール強度を測る剥離試験
前回の記事では、粘着テープや粘着シートの剥離力測定に用いられる試験として、90度剥離試験と180度剥離試験の紹介を行いました。第2回となる今回は、カップ容器やお菓子袋など、パッケージに用いられる剥離試験方法として、「45度剥離試験」と「T型剥離試験」を紹介します。
剥離試験紹介① 『90度剥離試験、180度剥離試験』の記事はこちら
食品などのパッケージでは、輸送時や陳列時には密封状態が保たれる一方で、開けたいときには簡単に開封できるということが求められます。特にフィルムパッケージでは(近年では紙パッケージでも)、ヒートシールが密封に重要な役割を果たしており、その剥離力を測定する45度剥離試験、T型剥離試験は、多くのパッケージメーカーでも実際に採用をされています。そこで今回は、その試験方法と、測定結果の評価方法について紹介します。※ヒートシールとは、フィルムに熱と力を加えることで溶着をする加工方法です。
45度剥離試験
最初に紹介をするのは「45度剥離試験」です。45度剥離試験は、ゼリーなどのカップ容器の開封性評価に用いられる試験方法です。カップ容器の蓋をつまみ、接着面に対して斜め上(45度方向)に引き剥がして、剥離力の測定を行います。
JIS S 0021-2;2018(包装−アクセシブルデザイン−開封性)では、全面剥離を行い、最も抵抗力が高かった部分の数値を「開封強さ」として規定しています。一方で、「45度を維持しながら全面剥離することの難しさ」「カップ容器の特性として、多くの場合、開けはじめに最も大きな抵抗力が発生する」ことから、開けはじめの抵抗力のみを評価する試験方法も多くのシーンで採用されています。
開封性の評価という点では、必ずしも開封強さ(剥離力)が高ければ良いという訳ではなく、商品のターゲット層の人にとって最適な剥離力で開封ができることが求められます。各パッケージ企業は、インタビューやパネル試験などから、最適な剥離力を導き出し、45度剥離試験を研究開発や品質管理に役立てています。
【45度剥離試験の特徴】
・カップ容器のフィルム蓋や紙蓋の開封に必要な力を測定。
・実際の人の動きに近い、45度方向への引き剥がし。
・多くの場合、開けはじめに最も大きな抵抗力が発生する。
※実際の測定の様子はこちらからご覧になれます。ゼリーカップ容器の蓋開封性試験(電動)
T型剥離試験
続いては「T型剥離試験」の紹介です。T型剥離試験は、お菓子袋やパウチ容器のヒートシール強度測定に用いられる試験方法です。測定時にサンプル片がT型になることから、T型剥離試験と呼ばれるこの試験では、ヒートシールでくっついたフィルムを引き剥がすように引っ張ることで、その剥離力を測定します。この剥離方法を用いる規格にはJIS Z1707:2019 (食品包装用プラスチックフィルム通則)があり、測定はヒートシール部分を切り出したサンプルを使用して行います。
T型剥離試験では、「十分な力で溶着されていることを確かめる強度試験」「容易に開封できることを確認する開封性評価」などの測定が可能です。またT型剥離試験は、パッケージ類のみならず、鉄板の溶接強度測定など、幅広い場面で活用をされています。
【T型剥離試験の特徴】
・ヒートシールされたフィルムを引き剥がすのに必要な力を測定。
・お菓子袋やパウチ容器のヒートシール強度測定、品質管理に利用される。
・袋状のまま測定を行うことで、開封性の評価も可能。
・鉄板の溶接強度など、多様な業界、サンプルで利用される。
※実際の測定の様子はこちらからご覧になれます。
まとめ
今回は、パッケージに用いられる試験方法として、45度剥離試験とT型剥離試験について紹介をしました。45度剥離試験の紹介でも触れたとおり、剥離力は必ずしも強ければ良いというものではありません。そのため、測定器を使用してしっかりと測定を行うことが品質の管理において重要な役割を果たします。次回は剥離試験紹介の第3回として「塗膜の付着性試験」について、紹介をする予定です。また、フォースチャンネルでは、荷重測定やチカラに関する様々な記事をお届けしています。是非、他の記事もチェックしてみてくださいね。