食品包装・飲料容器の品質管理試験 フィルムパッケージ編

ポテトチップスなどの菓子袋や各種パウチ袋など、フィルムパッケージは食品包装として多く採用されています。また、ペットボトルのラベルなど、飲料容器にフィルムが使用されているケースも少なくありません。そんなフィルムの品質管理に荷重測定が用いられているのはご存じでしょうか?今回の記事ではフィルムパッケージやフィルムの品質管理に荷重測定が使われている事例を紹介します。

目次

引張強度試験、伸び率測定

フィルムの品質管理や研究開発において、引張強度試験伸び率測定は最も一般的な試験のひとつです。

引張強度試験では、一定幅に切り出したフィルムの両端をチャック治具で掴み、上下に引っ張ることで、破断した際の強度を測定します*1。(引張力を測定できるよう、サンプルの片側は荷重測定器=フォースゲージに取り付けます。) 伸び率測定も引張強度試験と同様の方法で測定を行いますが、破断した際の強度ではなく、荷重値と伸び率の相関関係を分析することが目的です。

▲ フィルムの伸び率測定の様子(右)と荷重-伸び率グラフ(左)
試験開始時のチャック間距離を基準に、一定の荷重値でフィルムが何%伸びたかを確認します

フィルムの強度や伸び率に絶対的な正解はなく、各メーカーは、製品の用途や目的により定めた管理基準に従って品質管理を行っています。たとえば、レトルトパウチのパッケージに使用するフィルムと、生鮮食品に密着させて梱包するためのフィルムでは、当然ながら求められるフィルム特性が異なるからです。

いずれにせよ、正確な測定結果を得るためには、①サンプル幅が一定であること②試験開始時のチャック間距離が一定であること③試験速度が一定であることが重要です。また、伸びて薄く変形するようなフィルムでは、引っ張られると自動的に保持力が高まるような治具を使うなどの工夫も求められます。

*1 規格によっては、ダンベル型のサンプルを推奨している場合もあります。

摩擦係数測定

摩擦係数は、パッケージの製造工程において重要なフィルム特性です。 >>摩擦係数とは
たとえば、極端に摩擦係数が高い/低いと、フィルム搬送時のトラブルを引き起こすことがあります(搬送の不安定性、フィルムに伸びやシワが発生するなど)。また、飲料ボトルでは、高い摩擦係数により、ラベル装着の作業効率が悪化してしまうなどの問題も起こりえます。

上記のような問題を防ぐためにも、摩擦係数を測定して管理することが大切です。
試験方法としては、大きなフィルムの上に、底面にフィルムを貼り付けたウエイトを置いて滑らせることでフィルム同士の摩擦を引き起こし、摩擦力、摩擦係数を測定するという方法が多く採用されています。 摩擦係数は理論上、ウエイトの重量やサイズに影響を受けないとされていますが、実際には影響を受けるケースも少なくありません。そのため、たとえばJIS K7125 (1999)「プラスチック-フィルム及びシート摩擦係数試験方法」では、ウエイト重量やサイズ、試験速度などについて細かく規定がされています。

▲ フィルムの摩擦係数測定の様子(右)と荷重-変位グラフ(左)
動き始めの静摩擦係数と移動中の平均動摩擦係数を測定するのが一般的です。

ヒートシールの強度試験

フィルムパッケージの密封方法として採用されているヒートシールでは、その剥離強度が荷重測定によって検査されています。試験方法は非常にシンプルで、一定幅に切り出したサンプルの片端をフォースゲージに取り付けたチャック治具で掴み、もう片端で反対側に引っ張り、ヒートシールが剥がれた際の荷重値を測定します。(より再現性の高い測定を行う場合は電動計測スタンドを使用します。)

測定結果は切り出し位置によりバラつきが出るため、複数個所の測定を行い、平均値で管理を行うというケースが多いようです。ちなみに、ヒートシールの剥離強度試験は、測定中にサンプルが「T」のカタチになることから、T字剥離試験とも呼ばれています。

ヒートシールの強度試験は、JIS Z0238 (1998) やJIZ Z1707 (2019) などでも言及されており、サンプル幅や試験回数などの試験方法が規定されています。必ずしも規格に準拠しなければならないということはありませんが、品質管理時には試験方法を定め、できるかぎり試験条件を均一化することが重要です。

易開封性試験

最後に紹介をするのは「パッケージの開けやすさ」を評価する易開封性試験です。

高齢者や子供、障害者など、開けやすいパッケージを求める声は少なくなく、易開封性の評価は多くメーカーにとっての課題となっています。易開封性試験の例としては、パウチ包装の引き裂き強度試験やカップ容器の開封試験(45度剥離試験)などがあげられます。

パウチ包装の引き裂き強度試験

レトルトパウチやスティック包装など、フィルムを引き裂いて開封することを前提としたパッケージでは、その引き裂き強度が開封性へと直結します。近年ではノッチ加工(開け口)やレーザー加工により、密封性を保ちつつ、より小さい力で開封可能なパッケージが登場をしています。

▲ 引き裂き強度試験の様子

カップ容器の開封試験(45度剥離試験)

先に紹介をしたヒートシールはカップ容器の蓋の接着にも使われており、その剥離強度がカップ容器の開封性として考えられます。開封用タブをフォースゲージに取り付けたチャック治具で掴み、開封するまで引っ張ることで剥離強度を測定します。

▲ カップ容器の開封試験の様子
規格上、カップの天面に対し45度の方向へ引っ張ると規定されていることが多く、45度剥離試験と呼ばれます。

まとめ

今回の記事では、食品包装や飲料容器に使用されているフィルム、フィルムパッケージの品質管理試験について紹介しました。今回紹介した試験以外にも、耐圧試験や突き刺し試験など、フィルムパッケージでは様々な荷重測定が実施されています関連記事参照

Force Channelでは、食品包装・飲料容器に関連する記事を多数公開しています。また、イマダの製品・サービスサイトでも、食品包装・飲料容器に関連する事例をより詳しく測定動画付きで紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。以上、フィルムパッケージの品質管理試験の紹介でした。

>>食品包装・飲料容器の荷重測定事例動画はこちら

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