Q:
圧縮試験する際、アタッチメントによって測定値が変わることがありますか?たくさんあるアタッチメントの中から、最適なものを選定するには何を考慮すべきでしょうか?
A:
荷重測定において、アタッチメントはフォースゲージの計測軸や計測スタンドに取り付けて使用される治具のことを指します。アタッチメントを通じてロードセルに荷重が伝わるため、その力のかかり方を規定するアタッチメントの形状は、測定値に大きな影響を与えます。他にも、アタッチメントの材質や滑りやすさなども測定値に影響を与える場合があります。
荷重測定においては、アタッチメント以外にも押し込み量や測定スピードなどが荷重値に影響を与える要素として挙げられますが、今回は、これらの試験条件は統一し、測定値に影響のあるアタッチメントの形状の違いで測定値がどう変わるかを検証してみました。
測定では、同じ試験機・測定条件(押し込み量、測定スピード)でさまざまな形状のアタッチメントを使用し、2種類のグミの圧縮試験を実施します。
今回使用した アタッチメント | 平型プローブ(Φ20mm) 広い面で荷重を受けることができるため、しっかりと押すことに加え、半固体状サンプルの粘度も測定可能です。 | 球型プローブ 点で力を加えられます。サンプルを圧縮して変形させることができるため、奥歯で食品を噛んでいる時の食感の測定ができます。 |
クサビプローブ サンプルを鋭利な刃先で押し切った際の硬さの測定にご利用いただけます。 プローブを上下にセットすれば、前歯で噛み切った時のような硬さも測定できます。 | 円錐プローブ 先端が尖っているので、物体にどれだけ貫入、進入しやすいかを測定できます。 | 円柱プローブ(Φ5mm) 小さな面でサンプルを押し、サンプルを局所的に押し出したり、潰した際の 力の測定ができます。 |
測定した結果として、テーブル上5mmまで圧縮した時の最大荷重値(N)を下表にまとめました。
アタッチメントの形状 | (幅:18.2㎜ 厚み:9.9㎜) | グミA(幅:18.2㎜ 厚み:13.4㎜) | グミB |
平型 | 27.2 | 69.26 | |
球型 | 6.68 | 23.40 | |
クサビ | 4.98 | 20.80 | |
円柱 | 4.52 | 13.40 | |
円錐 | 1.48 | 5.46 |
サンプル数: n=5の平均値
荷重値は大きいものから平型、球型、クサビ、円柱型、円錐の接触面積の大きい順になりました。特に平型の荷重値が大きく、それ以外はかなり小さい値となりました。これは、接触面積が大きいほど、全体の力はその面積全体に分散され、単位面積あたりの力は小さくなるため、サンプルを変形させるにはより大きな荷重値が必要になるからです。また、接触面積によってサンプルの変形の仕方や食い込み方も異なります。
上記の結果により、同じ条件における同じサンプルの測定でもアタッチメントの形状が違えば、接触面積も変わり、荷重値も変わることが証明されました。
ここまで見てきたように、アタッチメントにより同じ測定でも測定値が異なることがわかりました。ここからは多種多様のアタッチメントの中から最適なアタッチメントを選定する方法について説明します。
まず、アタッチメントの形状については、実際にサンプルが使用される環境に近い荷重のかかり方ができるものが理想的です。以下はいくつかの一般的な圧縮試験用アタッチメント形状と適した使い方の例です。
写真 | 形状 | 適した使い方 |
平型 | 円形や平型の治具で、面で押す圧縮試験に適しています。 | |
円錐 | 先端が尖った円錐形のアタッチメントはサンプルに貫通する力を測定したい場合に使用します。 | |
A型 | 山型の治具で、サンプルを切断する力の測定に使用します。 | |
V型 | V型の溝がある治具で、転がりやすいサンプルの測定に最適です。 | |
ピン形状 | 小さな部品や局所的に押す力を測定したい場合に使用します。 | |
球形状 | 小さな部品や局所的に押す力を測定したい場合に使用します。 | |
指で押す感覚を再現する形状 | シリコン製のアタッチメントで、指で押す感覚を数値化したい場合に使用します。 |
加えて形状以外に、配慮すべきポイントは下記に挙げられます。
1. 最大許容荷重値
各アタッチメントには最大許容荷重値というものがあります。測定で必要だと予想される荷重値よりも若干ゆとりのある許容荷重値のアタッチメントを推奨します。
2. アタッチメント重量
アタッチメント自体の重さもフォースゲージにとっては荷重として認識されるため、フォースゲージ最大許容荷重値の10%以下におさまる重さのアタッチメントを選ぶ必要があります。
3. 規格や業界標準への対応
JISやISOなどの規格に準拠する必要があれば、規格の定めた通りのものを選ばないといけません。
このように、アタッチメントを実際に選定するには、アタッチメントの形状や重量をはじめ、多くの要因を考慮する必要があります。試験の目的に最も適したアタッチメントを選ぶことで、信頼性の高い測定結果を得ることができます。いずれにせよ、アタッチメントを含めた試験の条件を統一させることが大切です。アタッチメントの選定について詳しくご相談されたい場合は、こちらまでお問い合わせください。
また、こちらのページでも、引張試験によく使われるチャック治具の選び方について説明しています。合わせてご覧ください。