キャンプ用品店やアパレルショップ、100均でも販売をされているアクセサリー用カラビナ。「耐荷重の表記がないけど、どれぐらいの用途まで使えるの？」と考え中のあなたに、荷重測定による調査結果を紹介します。
- 「引張試験」によって、変形、破壊強度の測定をおこないました。
- 測定結果は縦方向への測定で約500～850N。横方向への測定では約620～1050N。
- 鍵やスマートフォンなどをぶら下げるには十分。登山用、クライミング用としての使用はNG。
カラビナの強度はどの方向で測る？
アクセサリー用カラビナの強度を測る場合、縦方向への引張強度を測れば十分でしょうか。ここでは、耐荷重が明記されている登山用カラビナを参考に、カラビナの強度の測り方を検討します。
カラビナ本体に「UIAA」もしくは「CE」と記載のあるものが登山用です。登山用カラビナでは、下記の３つの測定条件で耐荷重性能が記されています。
- ゲートが閉じた状態での縦方向への引張強度
- ゲートが閉じた状態での横方向への引張強度
- ゲートが開いた状態での縦方向への引張強度
アクセサリー用カラビナの強度測定においても、縦方向だけでなく「ゲートを閉じた状態での縦方向への引張強度」「ゲートを閉じた状態での横方向への引張強度」「ゲートが開いた状態での縦方向への引張強度」の３パターンを測るのが良さそうです。
なお、自分の体重を支えるだけであれば、画像のカラビナほど高強度なカラビナは必要ないと思われるかもしれません。しかし、たとえば墜落時などには、瞬間的に非常に大きな荷重が発生します。そのため、登山用カラビナは、非常に高い強度をもつように設計、製造されています。(UIAAでは、たとえば縦方向18kN～25kN以上を合格基準として定めています。※形状により基準が異なります。)
アクセサリー用カラビナの強度を測定
強度を測る方向が決まったところで、次は測定の方法です。強度の測定では、実際の重量を加える場合もありますが、今回はチカラを測る測定器＝荷重測定器(フォースゲージ)を使用します。
荷重測定器(フォースゲージ)の先端にはセンサーに繋がる計測軸が付いており、計測軸にチカラが加わることで、チカラの大きさが画面に表示されます。計測スタンドを使用することで、大きなチカラでも安定して負荷、測定を行うことが可能です。*1
計測軸の先にフック治具を取り付けて、アクセサリー用カラビナを上下に引っ張ります*2。今回は2種類のサンプル（ともにアルミニウム製）で測定をおこないました。測定の結果は、下の表のとおりです。
| 縦方向 | 横方向 | オープンゲート | |
|---|---|---|---|
| サンプルA | 843N | 1052N | 828N |
| サンプルB | 503N | 624N | 494N |
※変形、ゲートの破壊が発生した時点の荷重値です。
引張試験の結果からは、アクセサリー用カラビナの強度は、登山用カラビナの強度と比べて非常に弱いものの、一定の用途までなら十分に使用できるレベルであることがわかります。最も弱いサンプルBの横方向の強度でも、50kg程度の負荷まで耐えることが可能です。たとえば、下記のような用途であれば、アクセサリー用カラビナは十分に使用できると言えそうです。
- キーリングとして複数のカギを束ねる。
- スマートフォンなどをストラップに取り付ける。
- ショルダーバッグの肩紐を取り付ける。
*1 今回の製品構成では2500Nまでの測定が可能です。
*1 UIAAに定められた測定方法とは異なります。
製品用途に応じた使用をおすすめします
今回の測定結果からは、アクセサリー用カラビナの強度が、縦方向で約500～850Nであることがわかりました。これはおおよそ50kg～85kg未満の重さであれば耐えられることを意味します。キーホルダーとして使用するのであれば、余程の数を同時に取り付けなければ問題がないレベルです。
もちろん、経年による劣化や、急激な負荷には注意が必要です。また、上記結果は今回測定したサンプルによるものなので、必ずしも全てのアクセサリー用カラビナの強度を代表するものではありません。数あるアクセサリー用カラビナの中のひとつの参考値としてご活用いただければと思います。なお、イマダのHPでは、引張試験や強度試験に関する測定事例動画を多数公開しています。また、Force Channelでも様々なチカラに関する記事を公開していますので、関連記事欄からチェックしてみてくださいね。
