Q.
パック包装の開封力を、デジタルフォースゲージを使って測定する場合、手で持って測定してよいですか?計測スタンドがないとダメでしょうか?
A.
「開封に必要な力が一定の基準値を超えているかだけ測りたい」、というような目的で測定される場合は、手で持って測定しても必要なデータが得られる場合が多いです。それ以上に精密な測定結果を求めたい場合などは、スタンドが必要になります。
以下、具体的に見ていきましょう。
まず、パック包装などヒートシールされた包材の開封強度の測定は、以下の写真のようなT型剥離試験などの方法で行われることが多いです。T型剥離試験の詳細は、剥離試験の紹介ページへ
このT型剥離試験は、サンプルを手で引っ張って測定することもできますし、計測スタンドを使用して測定することもできますが、この測定方法の違いが、特に試験の「再現性」の面で大きく試験結果に影響を与えます。
実際に、もやしの袋のヒートシール部分をサンプルに、以下の3パターンで開封強度を測定し比較してみます。
①手で引っ張って測定
②手動計測スタンドで測定
③電動計測スタンドで測定
測定値 (サンプル数:5個)
単位(N)
手で引っ張って測定 | 手動計測スタンドで測定 | 電動計測スタンドで測定 | |
Sample1 | 4.33 | 4.04 | 3.92 |
Sample2 | 4.34 | 3.78 | 4.03 |
Sample3 | 4.24 | 4.20 | 3.78 |
Sample4 | 5.76 | 3.99 | 3.56 |
Sample5 | 3.88 | 4.10 | 4.07 |
平均値 | 4.51 | 4.02 | 3.87 |
測定の荷重推移を表すグラフ
結果が示すように、手動の場合、ピーク値や荷重の推移でデータのばらつきが大きくなります。これは、測定結果に影響を与える引っ張る力、速度、方向などといった測定条件を、測定ごとに均一に保つことが難しいためです。
一方で、場所を選ばず、手軽に測定が行えることや、導入コストも抑えられるという利点もあるため、冒頭にあるように、「開封に必要な荷重値が一定の基準値を超えているかだけ測りたい」というような場合は、手動での測定で要件を満たせるケースが多いです。
しかし、計測スタンドを使用して測定する場合、導入時にコストはかかりますが、より幅広く精密な測定を実現することができます。フォースゲージを手で持って測定する場合と異なり、各種測定条件を均一に保ちやすいため、測定データのバラつきが低減され、再現性の高い測定が可能になります。また、人の手で測定が難しい大きな荷重の測定や微小な送り量での測定が簡単かつ安全に実現できます。
計測スタンドには、手動タイプと電動タイプがありますが、それぞれの特徴が異なります。手動計測スタンドの最大の特徴は、電源不要で小型のため、狭い卓上でも手軽に測定でき、電動タイプよりコストが抑えられます。
一方、電動計測スタンドは、剛性も高く、モーターで動きを制御するため、手動計測スタンド以上に各種試験条件を均一化することができ、再現性を最も高く測定を行うことができます。
剥離試験においては、手動計測スタンドの場合、測定者による操作速度の違いが結果に影響を与える可能性があるため、より再現性を高くということであれば、電動計測スタンドを推奨します。
よって、前述の結果にも表れているように、試験中の荷重の推移を正確に確認したい場合は計測スタンドが必要な製品といえます。また、機種によっては自動で同じ動きを繰り返したり、一定荷重をかけ続けたりするなどのプログラムもあるため、手動では難しい耐久性試験にも活用していただけます。
以上、測り方を決めるにあたって、検討しなければいけない点や手法別の特徴を紹介しました。これらの情報をまとめた比較表にまとめるとこのようになります。
検討項目 | 手で引っ張って測定 | 計測スタンド使用した測定 | |
手動タイプ | 電動タイプ | ||
再現性 | 低 | 中 | 高 |
速度の均一性 | × | △ | ◎ |
方向の均一性 | × | ○ | ◎ |
導入コスト | 低 | 中 | 高 |
狭い卓上で設置 | ◎ | ○ | △ |
電源不要 | ◎ | ◎ | × |
測定荷重 | 小 | 中 | 大 |
規格準拠 | × | × | ◎ |
送り量微調整 | × | △ | ◎ |
繰り返し測定 | × | △ | ○ |
一定荷重を一定時間キープ | × | × | ○ |
[荷重×変位]の測定 | × | × | ○ |
上記以外にも、ISOやJISの規格に準拠した測定を行いたい場合は、そこで規定されている条件を満たせるかも、測定方法を決める要因となります。最適な測定方法を確認したい、相談したいという場合はこちらからお問い合わせください。