食品包装などで多く使われているフィルムパッケージ。“開け口/切り口”などの言葉とともに、切込みが入っているのを見かけたことはありませんか?この記事では荷重測定を使って、切込みが開けやすさに与える効果を調査した結果を紹介します。
測定方法と測定条件
測定はJIS S 0021-2(2018)を参考に、下記条件にておこないました*1。
- サンプルは一辺がヒートシールされた2枚のフィルム(市販のパッケージの一部を切り出し)。
- ヒートシール部分を2個のチャック治具で固定(掴み間隔3mm)。
- 片方のチャックは紐で荷重測定器(フォースゲージ)と接続*2。もう片方はテーブルに固定。
- 600mm/minの速度で上下に引っ張り、引き裂きに要したチカラを測定。
*1 Force Channel独自の条件で測定しています。JIS S 0021-2(2018)に準拠する方法ではありません。
*2 荷重測定器(フォースゲージ)とは、チカラの大きさを測るための測定器です。測定結果はチカラの単位Nで表示されます。
測定結果
今回は同じフィルムパッケージを用いて、①切込みなし、②切込みあり(Iノッチ)、③切込みあり(Vノッチ)のサンプルをつくって測定をおこないました。測定の結果は、下の表とグラフのとおりです。
サンプル①:切込みなし | サンプル②:Iノッチ | サンプル③:Vノッチ |
最大荷重値(開封力):13.34N | 最大荷重値(開封力):2.10N | 最大荷重値(開封力):2.29N |
測定結果からは、切込みがあることで、より小さなチカラで開封できることがわかります。一方でIノッチとVノッチでは、開封性に大きな違いはないようです。
なお、今回の測定ではチャック治具で強固に掴んでいるため、切込みなしでも開封できました。しかし実際には、ヒトの指で開封をおこなうのは容易ではありません。(筆者が指で測定をしてみたところ、10N程度のチカラで滑りが生じてしまい、開封をすることはできませんでした。)
切込みがあることで開封性が高まるのは、応力集中という現象が生じているためです。サンプルに加えられたチカラは、角や切込みなど形状の変化が大きな箇所に集中しやすく(応力集中)、切込みが入ったサンプルでは、切込み部分にチカラが集中することで、より小さなチカラで開封することができます。
なお、切込みがないサンプルでは、チャックとの境目にて応力集中が発生しているため、実際に指でつまんで開封する際には、より大きなチカラが必要になると考えられます。
ミシン目の効果
切込みによる開けやすさの仕掛けとは別に、ミシン目の切込みが入ったパッケージについても測定をおこないましたので、測定結果を紹介します。
グラフからは、ミシン目による荷重値の上下を見ることができます。開封に必要なチカラは、ミシン目なしの場合と比べて約1/9の小さなチカラが最大値となっていることがわかります。
また、開封後の開封口にも大きな違いが見て取れました。ミシン目なしの場合には、開封口が斜めになっていたり、フィルムが捻じれて伸びていたりする一方、ミシン目ありの場合には、ミシン目に沿って真っすぐきれいな開口部になっています。
まとめ ― 開封性向上における企業努力
今回、フィルムパッケージの開封性を測定した結果、以下のことがわかりました。
● 切込みがあることにより、より小さなチカラでフィルムパッケージを開封することができる。
● ミシン目があることで、開封性が高まると同時に真っすぐ開けやすくなる。
上記の結果は、あくまで使用したサンプルに限った結果ではありますが、ひとつの参考値としてご活用いただければと思います。ちなみに、今回は目に見えてわかりやすい切込み、ミシン目をサンプルとして取り上げました。しかし、実際のフィルムパッケージでは、表層フィルムにだけレーザー加工で切込み、ミシン目を入れるなど、開封性を高めるさまざまな工夫が施されているそうです。
それぞれの工夫によって、開封性にどれだけ影響が出るのか測定してみたいという方は、ぜひ今回紹介した方法を参考にしてみてください。なお、イマダのHPでは、包装に関する測定事例動画を多数公開しています。また、Force Channelでも包装に関する記事を公開していますので、関連記事欄からチェックしてみてくださいね。