校正とは、測定器が示す「表示値の正確さ」を確認するための作業です。測定器の信頼性を維持するためには、定期的な校正により、表示値の正確さを確かめておくことが不可欠です。本記事では、フォースゲージ(荷重測定器とも呼ばれる)に焦点をあてて、校正の基本概念から、校正機関、一般校正・ISO/IEC 17025校正・JCSS校正の違い、証明書の種類と役割について、わかりやすく解説します。
なお、イマダ製フォースゲージの校正をご希望の方は、下記リンクより製品・サービスサイトをご参照ください。
フォースゲージ校正の基本概念|目的と方法
校正が果たす最も重要な役割は、その表示値を確かめ、測定器の信頼性を確保することです。
フォースゲージなどの測定器では、長期間の使用や周囲の環境の影響で、表示値が少しずつズレてきます。そのため、定期的に表示値の確認(校正)と必要に応じた調整を行い、信頼できる表示値を維持することが求められます。

多くの測定器の運用では、校正結果が連続して合格(管理基準値内)の場合、その間の測定結果を信頼できるものとして考えます。しかし、最新の校正結果が不合格となった場合には、前回校正から今回校正までの間において、どの時点から基準値から逸脱していたかを特定することは困難です。
この「基準値を逸脱していたリスクを抱える期間」は、校正間隔が長いほど長期化します。したがって、校正間隔が長いほど、逸脱が発覚した際の問題が深刻化するリスクも高まります。
フォースゲージでは、表示値の変化の速度も考慮して、1年に1回以上の頻度で定期校正を行うことを推奨しています。また、校正機関での正式な校正だけでなく、日常的に簡易な精度確認を行い、精度のズレを早期に発見・対応することができれば、測定器の信頼性をより高いレベルで維持することが可能です。
ただし、「落下などで衝撃が加わった」「オーバーロード(過負荷)させてしまった」などの場合には、外観上は故障がなくても、急激に表示値がズレている恐れがあります。こうした場合には、定期校正とは別に、早期に校正機関に精度確認を依頼することをおすすめします。
[フォースゲージの校正の手順]
フォースゲージの校正では、信頼できる標準器(もしくは参照標準分銅)を用いて一定の力を加え、フォースゲージの表示値を確認します。標準器が示す荷重値=標準値と、校正対象のフォースゲージの表示値を比較することで、表示値の正確さを確認するという方法です。

たとえば、標準器を使って、100Nの負荷を加えた結果、フォースゲージに100.3Nと表示されたとします。その場合、標準値と表示値の差は「+0.3N」です。同様の確認作業をいくつかのポイント(荷重値)でおこなうことで、フォースゲージの測定レンジ内で正確性が保たれているか否かが確認できます*1。

ちなみに、測定器における校正では、表示値の調整を、その作業内容には含めません。そのため、校正の結果が自社の要求する範囲内に入っていないのであれば、別途測定値の調整(修理)が必要です*2。
*1 実際には各ポイントで複数回の測定をおこない、実測値が決定されます。また、校正結果を証明できるのは、校正をおこなったポイント(荷重値)においてのみです。ポイント間の力が加わった際の表示値の正確さは推定となりますので、必要に応じて細かくポイントを設けて校正をおこなうことをおすすめします。
*2 調整によって各測定器が実現できる表示値の正確さには限界があります。詳しくは各測定器メーカーにお問い合わせください。なお、イマダのメーカー校正では、校正結果(実測値)の合否判定基準として各測定器が持つ仕様上の精度を使用しています。
フォースゲージの校正機関|メーカー校正と外部業者校正
フォースゲージを含む測定器の校正は、多くの場合、次のいずれかの機関に依頼します。
- 製造元メーカー(メーカー校正)
- 校正を専門とする外部業者(外部業者校正)
校正依頼先を選ぶにあたっては、製品を熟知し、厳密な作業手順をもって校正をおこなってくれる校正機関を選ぶことが大切です。製品に対する知識量は、測定器の異常に対する察知能力にもつながります。製造元メーカーによる校正では、表示値のズレや故障が見つかった際に、スムーズに修理に移行できるのも利点のひとつです。
なお、社内規定や取引先要望により、ISO/IEC 17025校正と呼ばれる認定校正を求められる場合があります。その場合には、ISO/IEC 17025校正機関として認定を受けている校正機関から、校正依頼先を選ばなければなりません。(製造元メーカーが、ISO/IEC 17025校正機関として認定を受けている場合もあります。)
認定校正とは|一般校正、ISO/IEC 17025校正、JCSS校正の違い
認定校正とは、外部認定機関の認定を受けた校正機関が、認定された手順に従って行う校正です。ISO/IEC 17025校正やJCSS校正が、認定校正にあたります。一方、認定校正以外の校正は一般校正と呼ばれ、校正機関が独自に定めた手順で校正が行われます。
「認定校正の方が、一般校正よりも信頼性は高い」とは必ずしも断言できません。しかし、一般校正は手順が校正機関ごとに異なるため、校正内容が適切かを確認し、信頼できる校正機関を選ぶことがとても重要です。

ISO/IEC 17025校正とは?
ISO /IEC 17025校正は、代表的な認定校正のひとつです。ISO/IEC 17025校正を行う校正機関は、ISO /IEC 17025の要求基準をもとに審査、認定を受けます。ISO/IEC 17025に基づいて認定された校正機関が、認定された手順に従って行う校正がISO/IEC 17025校正です。(ISO/IEC 17025に基づいて認定された校正機関であっても、審査を受けていない独自の手順で校正を行った場合、それは一般校正に分類されます。)

ISO/IEC 17025校正は、ビジネスのグローバル化に伴い、その需要を高めています。国際的なビジネスをおこなう企業が増えた昨今では、より国際的に通用する校正結果、校正証明書が求められます。ISO/IEC 17025校正は、その認定基準となる国際規格ISO/IEC 17025の信頼性により注目を浴びており、今後ますますその需要が増していくと予想されます。
一方、認定校正には、認定機関による審査基準の違いという課題があります。当然ながら、審査基準の信頼性が高いほど、校正結果への信頼性も高くなります。しかし、どの認定機関がどのような基準で審査しているのかを、ユーザーが判断するのは容易ではありません。
この課題を解決するために作られた仕組みが「相互承認協定(MRA)」です。MRAとは、認定機関同士が互いの認定基準を評価し合い、「同等の基準で認定している」と互いに承認し合う制度です。
ISO/IEC 17025校正に関連する最も大きなMRAにILAC-MRAがあります。
ILAC-MRAは、全世界で90を超える認定機関が参加をする相互承認協定です。
ILAC-MRA登録認定機関から認定を受けた校正機関は、発行するISO/IEC 17025校正証明書に、ILAC-MRAマークを付けることができます。ILAC-MRAマークは、「認定を受けた校正機関が、認定された校正手順に従って実施した校正結果である」ことを示すものです。そのため、ILAC-MRAマークが付いた校正証明書は、国際的にも高く信頼されています。
[ILAC-MRA登録認定機関に認定された校正機関は…]
・ ISO/IEC 17025校正を行う校正機関として、国際的に見ても信頼性の高い認定がなされている
・ ISO/IEC 17025校正証明書にILAC-MRAマークが付く=国際的に信頼性の高い校正証明を得られる

認定機関であるPJLAの認定マークとともにILAC-MRAのシンボルマークが記載されます。
JCSS校正とは?
日本国内では、認定校正を指す名称としてJCSS校正が広く知られています。JCSS校正とは、IA Japan(JCSS校正事業者登録制度の認定センター)から認定を受けた校正機関だけが実施できる認定校正です。IA Japanは、その認定基準としてISO/IEC 17025の要求事項を採用しています。そのため、JCSS校正は、ISO/IEC 17025に基づく校正(ISO/IEC 17025校正)の1つであると位置づけられます。

また、JCSS校正機関を認定するIA Japanは、ILAC-MRAに参加をしています。つまり、JCSS校正証明書には、ILAC-MRAマークが付いており、「ILAC-MRA登録認定機関により承認された認定基準に合格した校正機関が、認定された校正手順に従って実施した校正結果である」ことを示します。
(裏を返せば、IA Japan以外のILAC-MRA登録認定機関から認定を受けた校正機関・校正手順は、IA Japanも承認した認定基準に合格していると考えられます。つまり、ILAC-MRAマーク付きの校正証明書は、JCSS校正であるか否かにかかわらず、同等の認定基準に合格した校正機関、校正手順によっておこなわれた校正の結果であることを証明していると認められます。)
【ISO/IEC 17025校正(ILAC-MRAマーク付き)とJCSS校正では、国際的に同等の信頼性を持つ校正証明書が発行されます】
・日本国内のJCSS(校正事業者登録制度)は、ISO/IEC 17025と同等の認定基準を採用しており、ILCA-MRAにも参加しています。
・校正証明書にILAC MRAマークが付く場合、校正事業者の認定機関が違っても、相互認証により、国際的に同じ信頼性を持つ校正と認められます。
→ つまり、ILAC-MRA付き校正証明書を発行できる校正事業者は、技術能力や信頼性において、JCSS校正事業者と国際的に同等の認定を受けているというわけです。
検査成績書、校正証明書、トレーサビリティ体系図
フォースゲージを含む測定器の校正では、校正結果の信頼性を高めるため、校正結果や校正機器に関するさまざまな証明書が存在します。本記事では、最も一般的に普及をしている3つの証明書について解説します
- 検査成績書
- 校正証明書
- トレーサビリティ体系図
なお、証明書に記載される内容は、証明書を発行する校正機関により多少の違いがあります。ここで紹介するのは、株式会社イマダが発行する証明書についての説明です。それぞれの校正機関で発行される証明書の内容については、各校正機関にお問い合わせください
検査成績書
検査成績書は、校正により確認された表示値(実測値)*3や測定環境が記載された書類です。合否基準がある際には、合否判定が記載される場合もあります*4。検査成績書は、あくまで校正の結果を証明する書類であり、校正手順や使用された標準器・参照標準分銅に対して証明をするものではありません。校正手順などについては、次に紹介をする校正証明書によって証明されます。

*3 各ポイントで複数回の測定をおこない、実測値が決定されます。
*4 イマダでは、校正結果(実測値)の合否判定基準として各測定器が持つ仕様上の精度を使用しています。
校正証明書
校正証明書は、一般校正とISO/IEC 17025校正によって記載される内容が異なります。株式会社イマダの場合、一般校正時には要望に応じて、ISO/IEC 17025校正時には必ず校正証明書を発行します。
[一般校正の校正証明書]
一般校正における校正証明書の役割は、「定められた手順に基づいて校正が実施されたことを証明する」ことです。また、校正に用いられた標準器・参照標準分銅についても情報が記載されます。校正により確認された表示値(実測値)や合否判定は記載されません。そのため、校正証明書は検査成績書とセットで提供されることがほとんどです。(検査成績書は単体で発行される場合も多くあります。)

[ISO/IEC 17025校正の校正証明書]
「定められた手順に基づいて校正が実施されたことを証明する」という点では、一般校正の校正証明書と同じ役割を果たします。一般校正の校正証明書と異なる点としては、下記があげられます。
- 定められた手順がISO/IEC 17025校正認定機関による認定を受けている
- 校正証明書に測定結果および測定の不確かさが記載される
- 国家標準へトレーサブルな機器を校正に用いたことが証明される*5
- 校正機関の認定機関(IA Japanなど)のシンボルマークが付く
*5 国家標準へのトレーサビリティは、ISO/IEC 17025校正機関認定における要求事項の1つです。そのため、校正証明書にその旨が明記されなくとも、ISO/IEC 17025校正認定機関のシンボルマークが付くだけで、国家標準へのトレーサビリティを証明する役割を果たします。

なお、株式会社イマダの場合には、一般校正時に発行する校正証明書にも、校正に使用された標準器・参照標準分銅が国家標準にトレーサブルである旨が記載されています*6。ただし、ISO/IEC 17025校正証明書も含めて、校正証明書に「国家標準までの校正の連鎖構造を図示した情報」は記載されません。その連鎖関係を明確に示す書類が、次に説明する「トレーサビリティ体系図」です。
*6 校正機関によっては、校正証明書で国家標準へのトレーサビリティが証明されていない場合もあります。それぞれの校正機関で発行される証明書の内容については、各校正機関にお問い合わせください。
トレーサビリティ体系図
トレーサビリティ体系図とは、校正に用いられる標準器・参照標準分銅が、どのように国家標準に繋がっているかを示す体系図です。株式会社イマダの場合、校正証明書にもトレーサビリティに関する証明が含まれますが、国家標準までの連鎖構造を体系的に示すものではありません。そのため、より一層信頼性を高める書類として、トレーサビリティ体系図も多く発行されています。
なお、トレーサビリティの証明が校正証明書に記載されない場合には、校正証明書とトレーサビリティ体系図の組み合わせによって、国家標準へのトレーサビリティが証明されます。(校正証明書にトレーサビリティの証明が記載されるかは、各校正機関にご確認ください。)

【参考情報】トレーサビリティとは、次の2つの要件の満たしている状態を指します。
- 「校正に使われた標準器が明らかであること」「その標準器の校正に使われた親標準器が明らかであること」これらの連鎖に切れ目がないこと。
- 連鎖の結果として、国家計量標準と呼ばれる、国家が認めた標準器にたどり着くこと。
校正結果の信頼性を考えるとき、校正に使用した標準器・参照標準分銅の信頼性は非常に重要な要素です。トレーサビリティが証明されることで、基準となる標準器、さらには校正結果の信頼性が証明されます。
まとめ
本記事では、測定器の信頼性を維持するために、定期的な校正が必要であることを説明してきました。
校正機関や校正内容を選ぶ際には、認定校正が必要なのかを確認することが大切です。そのうえで、校正内容が信頼できるか、製品知識は豊富か、といった観点から依頼先を選ばれることをおすすめします。
また、校正の目的によって、必要な書類(検査成績書/校正証明書/トレーサビリティ体系図)は異なります。測定器が簡易確認用に留まるのか、それとも品質管理に使用されたり、取引先に証明書を求められたりするのか。どこまでの書類が必要なのかを見極めることが、適切な校正運用につながります。
イマダでは、自社製品への校正サービスの提供はもちろん、測定器の日常点検や自社校正に使用できる器具の提供もおこなっております。校正や測定値の調整、修理に関するご相談も製品・サービスサイトより随時受け付けておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
– 本記事に表現された意見、解釈は、株式会社イマダによるものです。株式会社イマダのISO/IEC 17025校正認定機関であるPJLAによる認定を受けたものではありません。

