食品や飲料の包装において、「中身を保護する」という機能は非常に重要な要素です。近年では、トレーを排除した簡易包装の生鮮食品であったり、スパウトパウチに入った飲料であったりと、多様な包装形態見かけるようになりましたが、やはり輸送や保管、陳列に耐えられる強度は、包装における大前提です。そこで今回のシリーズでは、食品包装・飲料容器の強度試験に焦点を当てて、その測定事例について紹介します。第1回となる今回は、強度試験の中でも”圧縮強度”を測定する事例の紹介です。
ペットボトルの座屈強度試験
ペットボトルの品質管理において、座屈強度試験は最も一般的な試験のひとつです。
ペットボトルにおける座屈強度試験(トップロードテスト)では、フォースゲージやトップロードテスターを使ってペットボトルを真上から押し潰すことで、折れ曲がったときの圧縮力(座屈強度)を測定します。座屈強度を管理することは、輸送・保管時の積み重ねへの耐久性という点ではもちろん、充填やキャッピング工程でのトラブル回避という点も非常に重要です。
ペットボトルの座屈強度試験は、充填前の空の状態で、蓋を外して行うのが一般的です。これは容器本来の強度を測定するためであり、圧縮治具にも空気の抜け道用の溝が入ったものを使用します。たとえば同じ容器でも、蓋の有無、圧縮治具の違いにより、測定結果に下図のような違いが出ます。
座屈強度が低くなれば、輸送・保管時に凹みや破損などのリスクが高まる一方で、消費後の潰しやすさという観点では優位性につながります。近年では、あえて座屈強度が低い数値となっている製品もあるようです。いずれにしても、各製品が持つべき座屈強度を定めて、管理を行うことが大切です。
レトルトパウチ包装の耐圧縮強度試験
次に紹介をするのは、レトルトパウチ包装の耐圧縮強度試験です。
レトルトパウチ包装は、溶着により密閉をおこなう包装形態であり、その密着性を評価するために耐圧縮試験が用いられます。試験では、内容物が入ったレトルトパウチ袋を、一定の荷重で一定時間圧縮して破損や漏れがないかを確認します。荷重や時間に決まりはありませんが、たとえばJIS Z 0238:1998(ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法 “10.耐圧縮強さ試験”)では、内容物量により定められた荷重で1分間圧縮すると規定されています。圧縮時には、溶着部分へしっかりと負荷がかかるように、容器全体を圧縮することが大切です。
同様の対圧縮強度試験は、お菓子の包装に使われる紙箱や輸送用に使われるダンボール、スパウトパウチ包装などにも応用が可能です。とりわけ、輸送・保管時の段積みに対する耐久性は、ダンボールの強度に大きく影響を受けます。食品個々の包装と合わせて、しっかりとした強度管理が必要です。
包装フィルムの突き刺し強度試験
最後に紹介をするのは、包装フィルムの突き刺し強度試験です。
先に紹介をした耐圧縮強度試験が製品全体を圧縮するのに対して、突き刺し試験では細いピンを使用して圧縮力を加えることで、貫通した時の強度を測定します。食品包装用フィルムの突き刺し強度試験に関する規格ついては、JIS Z1707:2019(食品包装用プラスチックフィルム通則)があり、突き刺しに使用するピンのサイズや試験速度が規定されています。包装された状態ではなく、フィルムの状態で試験を行うのが一般的です。
近年では、真空パックにより長い賞味期限を実現している商品も多く見かけますが、突き刺しにより小さな穴(ピンホール)ができてしまうと、カビや酸化の原因となります。また、ナッツ類や冷凍食品などの硬い食品では、包装フィルムにピンホールが起こりやすく、包装に使用するフィルムは、突き刺し強度をしっかりと管理することが大切です。なお同様の試験を応用することで、飲料カップ容器にヒートシールされた蓋に対するストローの突き刺し性を測定することも可能です。
まとめ
今回の記事では、食品包装・飲料容器の強度試験を紹介するシリーズの第1回として、圧縮強度試験の事例を紹介しました。必要な強度を定めて管理を行うことは、梱包・輸送・保管時おける、さまざまなトラブルの回避につながります。強度試験では、規格に沿った試験を行うことも大切ですが、何より懸念される破損に対して強度の確認、管理を行うことが大切です。冒頭でも述べたとおり、近年では包装形態の多様化が進んでいます。測定方法に悩むときには、ぜひ荷重測定の専門メーカーへ相談をしてみてください。
イマダのHPでは、今回紹介した試験をはじめ、食品包装・飲料容器に関するさまざまな荷重測定の事例動画を公開しています。また、フォースチャンネルでも、荷重測定やチカラに関する様々な記事をお届けしています。是非、チェックしてみてくださいね。
※食品包装・飲料容器の測定事例動画はこちらからご覧いただけます。