押す力・引っ張る力の測定|力の基礎知識と測定方法をわかりやすく解説

製造業や材料研究の分野では、品質管理や材料特性の評価を目的として、「物体を押し引きする力」の測定が広く活用されています。本記事では、「押す力」「引っ張る力」の測定について、力の基本的な考え方から、測定の目的、方法、活用事例までを、順を追って解説します。

(本記事の全体像は下記画像をご覧ください。また、測定方法をすぐに知りたい方は、「3.押す力、引っ張る力の測定方法」からお読みください。)

Force Channel記事「押す力・引っ張る力の測定|力の基礎知識と測定方法をわかりやすく解説」のまとめ画像です。
目次

押す力、引っ張る力の基礎知識

測定の話に入る前に、そもそも「力(チカラ)」とは何かを考えてみます。

日常では「超能力や鈍感力」など、さまざまな力を耳にしますが、Force Channelでは、「物体を変形させる作用」「物体の速度を変化させる作用」として力を説明しています。つまり、物体が静止している場合、加えられる力が大きくなるほどに、作用を受ける物体は大きく変形し、ときには壊れてしまうというわけです。(物体が動ける場合には、力の作用を受けると動き始めます。また、すでに動いているものに力が加わると、移動速度が速くなったり、動きが止まったりします。これが「物体の速度の変化」です。)

力が作用することでサンプルに起こる変形・破壊のイメージ画像(イラスト)です。

力は、測定の分野では「荷重」と呼ばれることもあり、そのため力の測定は「荷重測定(かじゅうそくてい)」と呼ばれています。そのまま「力測定」と表現する場合もありますが、測定業界では「荷重測定」が一般的です。海外ではForce Measurement(力測定)が多く使われており、日本と呼び方が少しとなるのはおもしろいところです。

「荷重」とは、物体が外から受ける力のことです。たとえば、耐荷重という言葉は聞いたことがあるかと思います。厳密には「力」と「荷重」には違いがありますが、入門レベルとしては、「荷重=物体を外から押し引きする力」と考えておけば問題ありません。

押し引きする力の単位N (ニュートン)

力の測定を理解するうえで、「単位」の話は欠かせません。力の単位にはN(ニュートン)、kgf(キログラムフォース)、lbf(ポンドフォース)などがありますが、日本国内ではN(ニュートン)を使用することが計量法で定められています。

1Nは、物理学では「質量1kgの物体に1m/s2の加速度を生じさせる力」と説明されますが、入門レベルでは次のイメージだけ覚えておけば十分です。

1kgの物体を手のひらに載せた時に受ける力(地球上)=約9.8N

この感覚を覚えておくと、たとえば「100Nの力を加えたら壊れた」と聞いたときに、「10kgぐらいの重さを載せたら壊れる、というイメージだな」と頭の中で素早く変換できるようになります。

握力計などでは、「kg (kgf)」が力の単位として使用されていますが、これは歴史的な経緯による例外的なものです。現在の計量法では、力の単位にはNを使用することが定められています。そのため、力を測る測定器においても、日本国内でkgf表示、lbf表示の製品を販売することは(一部例外を除き)認められていません。

力を測るとわかること

冒頭で触れたとおり、力の測定は、製造業や材料研究の分野で広く活用されています。この章では、「なぜ力の測定が使われているのか」、「力の測定で何がわかるのか」について見ていきます。

どうして力の測定が製造業の現場で使われているの?

力の測定が行われるいちばんの理由は、「数字による比較や管理」へのニーズにあります。数字による比較や管理は昔から行われてきましたが、近年では次のような背景から、その重要性がさらに高まっています。

[品質管理への要求の高まり]

現在の市場では、競争の激化により「不良が少ない」はもはや当たり前になっています。また、法規制やコンプライアンス要求の高まり、SNSの普及などにより、品質トラブルが企業に与えるリスクは以前にも増して大きくなりました。こうした社会背景のもと、品質トラブルを未然に防ぐため、品質を数値で管理することへのニーズが高まっています。

[熟練技能者の高齢化、ロボットやAIの普及]

熟練技能者の技能を、数値化してマニュアル化したいというニーズも背景のひとつです。次世代への技能継承や、ロボットなどによる作業代替などを目的として、ノウハウの明文化が進んでいます。たとえば食品業界では、職人の感覚で「ちょうどよい」とされてきた食感を、力の測定によって数値化しようする動きも見られます。

[グローバル化による管理の難しさ]

ビジネスのグローバル化が進むなかで、品質管理は以前よりも複雑になっています。多国籍に生産拠点を持つ企業にとって、拠点ごとに品質レベルを揃えることは簡単ではありません。言葉や文化の壁があるなかで、数値化による品質基準の共有は、ますます重要な役割を果たしています。

数値化により、感覚による検査がどのように変わるかを示したイメージ画像です。

力の測定で何を数値化することができるの?

力の測定には、目的に応じて大きく2つの考え方があります。

【 ① どれだけの力が加えられているかを知りたい 】
ひとつめは、「力そのものを数値化する」ことを目的とした測定です。
たとえば次のような測定が挙げられます。

・ある動きが生み出す力を測る(例:プレス機の押す力、ヒトの身体能力測定 など)
・力の調整、制御のために測る(例:100Nの力を30秒間キープする*1 など)

*1  製造業の現場では、力の調整や制御を目的とした測定が多く行われています。製品の耐久性を検査する試験として、一定の荷重を一定時間キープする条件が指定されるケースも少なくありません。

【 ② どれだけの力を加えると変化が起きるのかを知りたい 】
ふたつめは、力によって生じる変化から「製品・材料の特性を数値化する」ことを目的とした測定です。

・変形が起きる力を測る(例:ばねの引張試験、曲げ試験 など)
・壊れる力を測る(例:製品強度試験、粘着力測定 など)
・動き出す、移動する力を測る(例:摩擦力測定、スイッチの操作性試験 など)

とくに「製品・材料の特性を数値化する」ための測定は種類が多岐にわたるため、代表的な事例を抜粋した表を次に示します。

強度の数値化変形の数値化剥がれやすさの数値化
どれくらいの力で押す/引っ張ると壊れるのかを数値化
(かばんの持ち手の耐荷重 など)
どれくらいの力で押す/引っ張るとどれぐらい変形するのかを数値化
(つぶれ/曲げ/伸び など)
どれくらいの力で引っ張ると剥がれるのかの数値化
(カップ容器の開けやすさ など)
滑りにくさの数値化操作力の数値化食感の数値化
どれくらいの力で押す/引っ張ると滑り動くのかの数値化
(床の滑りにくさ など)
どれくらいの力で押す/引っ張ると動作するのかの数値化
(ブレーキの操作力 など)
どれくらいの力で押すと食品が砕けるのかなどの数値化
(クッキーの固さ測定 など)

なお、より高度な測定では、「力の変動」から、製品・材料の特性が分析される場合があります。たとえば、パソコンのキーボードなどを押したときに、カクンッと押し返す力が下がるのを感じたとことはありませんか? キーボードなどの押しボタンスイッチでは、この押し返す力の変化により打鍵感*2が生み出されています。そのためキーボード業界では、打鍵感の分析や管理を目的として、「力の変動」が測定によって数値化されています。

*2 打鍵感(だけんかん)とは、キーボードを押したときの「感触」のことです。スイッチフィーリングなどとも呼ばれます。音や振動なども打鍵感に影響を与える要因ですが、押し返す力の変動も「打鍵感」に影響を与える大きな要因のひとつです。

押す力、引っ張る力の測定方法

ここまで、力の基本的な考え方から、測定の目的までを見てきました。
ここからは、「押す力」「引っ張る力」をどのように測定するのか、具体的な方法を紹介します。

力を測るための道具(フォースゲージ)

力を測るための道具ではフォースゲージがよく知られています。
フォースゲージには、ばね機構式のメカニカルフォースゲージ(プッシュプルスケールとも呼ばれる)と、ロードセル(力を測るセンサー)が内蔵されたデジタルフォースゲージがあります。方式は異なりますが、どちらも「測定対象を押したり引いたりして、力を測定する」という点は共通しています。

メカニカルフォースゲージとデジタルフォースゲージの比較イメージです。各フォースゲージの特徴が説明されています。

フォースゲージは「押す力」「引っ張る力」の両方向の力を測定することができます。ただし、実際の測定では、測定対象の形状や測定内容に応じて、計測軸にアタッチメント(測定用治具)を取り付ける必要があります。アタッチメントは、測定対象に実際に触れる部分となるため、力の測定において非常に重要な要素です。

デジタルフォースゲージに各アタッチメントを取り付けたイメージです。
アタッチメントには、平型圧縮治具、ピンゲージ、フック治具、チャック治具など様々なタイプ・形状のモノがあります。
一番左の画像で見えているネジを切られた軸が、アタッチメントを取り付ける計測軸です。

【フォースゲージ以外の力の測定器】
フォースゲージ以外の力の測定器としては、ばねの弾性を利用して力を測定する「ばねばかり」がよく知られています。フォースゲージと同様に、測定対象を押したり引いたりして力を測定するための道具で、シンプルで壊れにくい構造が特徴です。メカニカルフォースゲージと比べると、精度や機能面で劣るケースも多いものの、安価で扱いやすい測定器として、一定の需要を持つ測定器です。

フォースゲージの使い方

ここからはフォースゲージの具体的な使い方について説明します。

フォースゲージが実際に測定する力は、計測軸を通して内部機構に加わった力の大きさです。そのため、力を加える際には、できるだけ計測軸にまっすぐ(垂直)に力を加えることが重要です。斜め方向の力やねじりが加わると、正確な測定ができないだけでなく、故障の原因にもなります。とくにメカニカルフォースゲージでは、押す力と引っ張る力で計測軸が異なります。誤って反対方向の力を加えると、故障の原因となりますのでご注意ください。

フォースゲージに力を負荷する際の方向を図示しています(真っ直ぐ垂直に力を加えることが重要です)。

簡易的な測定では、フォースゲージを手で持ってサンプルを押し引きします。多くのフォースゲージには「ピーク値ホールド機能」が搭載されており、力の変化をリアルタイムで確認しながら、測定中に記録された最大値(ピーク値)を確認することが可能です。

デジタルフォースゲージの画面に表示される測定値(リアルタイムの測定値・ピーク値)が図示されています。

なお、フォースゲージは衝撃力を測定するようには作られていません。力を加える際には、ゆっくりと負荷をかけるように注意しましょう。フォースゲージの使用上の注意については、次の記事でも詳しく紹介しています。フォースゲージを初めて使用される方に読んでいただきたい内容をまとめていますので、是非ご一読ください。

手で持って測定できない力の測定

たとえば、ヒトの力では測定できないほど大きな力を扱う場合には、フォースゲージを計測スタンドに取り付けて使用します。計測スタンドを使用することで、500~5000N(約50~500kgの重さを載せたときと同等)のような力も、繰り返し安定して測定対象に加えることが可能です。

電動計測スタンド画像です。
最大500Nまで測定可能な電動計測スタンド(左)と最大5000Nまで測定可能な電動計測スタンド(フォースゲージを取り付けた状態)

計測スタンドの利点は、大きな力を取り扱える点だけではありません。
計測スタンドには、「試験条件を一定に保てる」というメリットがあります。とくに電動計測スタンドでは、試験速度や引張角度を均一に保ったり、一定の力を加えた状態を保持したりと、人の手では難しい試験条件を、繰り返し安定して実現できます。試験速度などの試験条件は、測定結果に大きな影響を与えます。そのため、それほど大きな力を扱わない測定であっても、正確さや再現性を重視する場合には、計測スタンドの使用をおすすめします。

【引張試験機、圧縮試験機と何か違うの?】
力を測定する試験機としては、引張試験機や圧縮試験機も有名です。フォースゲージと計測スタンドの組み合わせで構成される試験機も、引張試験機や圧縮試験機のカテゴリに分類されます(実際に測定業界では、引張試験機・圧縮試験機と呼ばれることも多いです)。とくにフォースゲージと計測スタンドの組み合わせでは、小型かつ低~中荷重(5000N以内)の測定用途となるケースが多く、卓上引張試験機・卓上圧縮試験機と呼ばれることも少なくありません。

* 測定できる指標や荷重帯については、製品による違いがあります。たとえば、引張試験機ではひずみやヤング率などの指標が測定可能な試験機も存在しています。各試験機で測定できる指標や荷重帯については、各メーカーによる情報をご確認ください。
* 規格によっては、試験機をより厳密に定義していることがあります。規格への準拠が求められる場合には、各規格で定められた試験機の定義をご確認ください。

【目的別 測定機器の選び方の参考】
・押す力、引っ張る力を簡易的に測りたい ▶ フォースゲージ
・繰り返し力の向きを揃えて測定したい  ▶ フォースゲージ+手動計測スタンド
・速度などの試験条件も揃えて測定したい ▶ フォースゲージ+電動計測スタンド
・ヒトの力よりも大きな力を測定したい  ▶ フォースゲージ+電動計測スタンド
・測定対象に加えられる力を制御したい  ▶ フォースゲージ+電動計測スタンド

* 測定には、アタッチメントや接続ケーブルが必要になる場合があります。詳しくは各測定器メーカーにお問い合わせください。

押す力、引っ張る力の測定の活用シーン

前の章では、力の測定方法について解説しました。ここでは、実際の製造業や材料研究の現場において、「押す力」「引っ張る力」の測定が、どのような場面で活用されているのかを紹介します。

  • ペットボトルの耐圧縮試験(押す力×強度)
  • スイッチの操作力測定(押す力×操作性)
  • クッキーの固さ測定(押す力×食感)
  • 粘着テープの粘着力測定(引っ張る力×強度)
  • フィルムの引張試験(引っ張る力×材料特性)

ペットボトルの耐圧縮試験(押す力×強度)

ペットボトルなどの包装容器では、輸送時や保管時にどの程度の力に耐えられるかを確認するために、耐圧縮試験(上から押し潰す試験)が行われます。別名「トップロード試験」とも呼ばれる試験です。メーカーによっては、横から押し潰すために必要な力の測定も行われています。

ペットボトルの耐圧縮試験イメージ

とくに軽量化が進むペットボトルでは、軽量化と強度を両立させることが大きな課題となっています。また、ごみ体積の削減という観点からは、「飲み終わった後の潰しやすさ」も求められています。このような背景から、押し潰す際に必要な力を数値化するために、力の測定が活用されています。

>>ペットボトルの耐圧縮試験の様子を見る

スイッチの操作力測定(押す力×操作性)

スイッチのON/OFFを切り替えるために必要な押し力も、製品開発や品質管理の現場で測定されている力のひとつです。スイッチの操作力は、製品の使いやすさや使い心地に大きな影響を及ぼします。とくに、押しボタンスイッチのクリック感(オンになったと直感的に認識できる感覚)には、押し返し力の変化が大きく関係していることが知られており、研究や品質管理の対象となっています。

スイッチの操作力測定イメージ、グラフイメージ

>>スイッチの操作力測定の様子を見る

クッキーの固さ測定(押す力×食感)

食品の食感の分野でも、力の測定による数値管理は進んでいます。その一例がクッキーの固さの測定です。固さの測定では、フォースゲージを用いてクッキーを押しつぶし、割れた瞬間の力を確認することで、固さを評価します。このような押す力の測定は、嚥下困難者用食品やユニバーサルフードの固さ評価にも活用されています。

クッキーの固さ測定イメージ

>>クッキーの固さ測定の様子を見る

粘着テープの粘着力測定(引っ張る力×強度)

粘着テープは、「引っ張る力の測定による品質の数値化」が最も進んでいる製品のひとつです。とくに粘着力は、製品仕様として明記されているケースも多く、測定方法を定めた規格(JIS、ISOなど)も複数存在しています。
粘着力の測定は、ステンレスパネルなどに貼り付けた粘着テープを、フォースゲージを用いて引き剥がすことで行います。引き剥がす角度や速度で測定値が変わってくる、シンプルに見えて奥の深い試験です。

粘着テープの粘着力測定イメージ

>>粘着テープの粘着力測定の様子を見る

フィルムの引張試験(引っ張る力×材料特性)

最後に紹介するのは、フィルムの引張試験です。この試験は、引張強度や伸びといった材料特性を数値化することを目的として行われます。プラスチックフィルムは非常に多くの用途で使用されており、用途に応じて、求められる特性もさまざまです。そのため、引張試験をはじめ、突き刺し強度や滑り性の評価など、さまざまな特性の数値化に、力の測定が幅広く活用されています。

フィルムの引張試験イメージ
フィルムの引張試験 荷重(引っ張る力)―伸びグラフ

>>フィルムの引張試験の様子を見る

まとめ

今回の記事では、「押す力」「引っ張る力」の測定について、基本的な考え方から測定方法、活用事例までを解説をしてきました。力の測定による品質・材料特性の数値化は、社会を取り巻く環境の変化も背景に、その重要性をますます高めています。本記事で紹介をした内容は、力の測定の一部にすぎません。力の測定により数値化できる分野は、現在もなお、さまざまな分野へと広がり続けています。

Force Channelでは、今後も引き続き「力の測定」をテーマに、情報発信を行っていきます。今回の記事をきっかけに力の測定に興味を持たれた方は、ぜひ他の記事もあわせてご覧ください。

【参考情報】

株式会社イマダでは、今回の記事で紹介した「フォースゲージ」「アタッチメント」「計測スタンド」などを幅広く製造・販売しています。測定機器にご興味のある方は、下記リンクより製品・サービスサイトをご覧ください。

>>イマダの製品・サービスサイトを見る

また、「こんな力が測りたいのだけどどうすれば良い?」「自社のサンプルにあった機器を提案してほしい」という場合には、機器選定のお手伝いもしております。相談をご希望の方は、下記リンクよりお問い合わせください。

>>測定のご相談はこちら | 荷重測定専門メーカーのイマダ

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