接着剤の接着強度評価(平面引張試験) [測定事例紹介]

測定相談Q: 接着剤による金属部品同士の接着を検討しており、接着剤の接着強度試験を行いたいです。前回の記事では、引張せん断試験について紹介されていましたが、平面引張試験についても教えてもらえますか?

A: 平面引張試験は、接着面に対して垂直に引張荷重を加えて破壊強度(破壊された際の荷重値)を測定する試験方法です。金属や硬質プラスチックなど、変形しづらい被着材に対する接着剤の強度試験として多く採用されています。平面引張試験と引張せん断試験のどちらの試験を行うかは、「実際に使用する際、接着面に対してどのような負荷が加わるか」を考慮して選択します(両方の試験を行うのも1つの選択肢です)。なお、平面引張試験と引張せん断試験の結果には、必ずしも相関性がないことには注意が必要です。

接着剤の接着強度評価 平面引張試験

接着剤の強度試験では、測定する荷重値が500Nを超えることも少なくありません。そのため、多くの場合、電動の駆動部を持った試験機器(荷重測定器+電動計測スタンドなど)を使用します。荷重測定器については、正確な破壊強度を測定するためにも、サンプリング速度に優れたデジタルフォースゲージの使用が推奨です。また試験治具には、接着面に対して垂直に引張荷重が負荷されるような機構が求められます。試験手順は至って単純で、次のとおりです。

[Step1]試験片同士を接着する(試験片のズレや傾きに注意)[Step2]接着剤硬化後、試験片を治具に取り付ける[Step3]試験片を上下に引張り、破壊時の荷重を測定する*

*破壊時の荷重=試験における最大荷重値です。

試験の実施にあたり、最も重要なのは、接着面に対して垂直に引張荷重を加えることです。接着面に対して傾いた引張荷重が負荷されると、正確な接着強度を測定できないだけでなく、測定器に対するダメージの原因にもなり得ます。そのため試験には、試験時に位置が調整される構造(たとえば調芯機構)を持つ治具の使用が求められます。

また、試験速度は試験結果に大きな影響を与えます。試験速度が速いほど破壊時の荷重値は大きくなる傾向があるため、サンプル間の比較を行うには、試験条件を揃えることが重要です。たとえば、JIS K 6849 (1994)「接着剤の引張り接着強さ試験方法」では、試験速度について「荷重速度は毎分3.92kN以下,又はクロスヘッドの移動速度を毎分50mm以下に調整する」と規定されています。

なお、試験結果は、最大荷重値(単位: Nなど)もしくは、単位面積あたりの最大荷重値(単位: N/mm2など)で記録をします。たとえば単位面積あたりの最大荷重値(N/mm2)は、最大荷重値(N)を接着面積(mm2)で除することで計算が可能です。単位面積あたりの最大荷重値を計算することで、接着剤の特性を知ることができるため、実使用時の接着強度の計算や、異なるサンプルサイズでの試験結果の比較などに役立てられます。

JIS K 6849 (1994)では、単位面積あたりの最大荷重値(N/mm2)を引張り接着強さと呼んでいます。また、試験は同一条件で5回以上行い、全測定値の平均値を求めるようにと規定されています。

接着剤の平面引張試験機器構成イメージ

以上、今回は接着剤の接着強度評価の一つである「平面引張試験」の紹介でした。なお、本文中では触れていませんが、接着剤の接着強度は被着材との相性により影響を受けます。そのため、接着剤選定の試験を行う際には、実際の部品の材質で試験片(テストピース)を作成することを推奨します。また、試験片のサイズ形状について絶対的な決まりはありませんが、JIS K 6849 (1994)には試験片に関する記載もあります。規格を参考にされるのも1つの選択肢かもしれません。

Force Channelでは、測定事例紹介をはじめ、荷重測定に関する様々な情報を発信しています。また、イマダの製品サービスサイトでは、様々な荷重測定の試験動画を公開しています。今回紹介した「接着剤の平面引張試験」についても、以下のリンクより動画や試験機器構成を公開しています。ぜひこの機会にチェックしてみてはいかがでしょうか?

>>接着剤の平面引張試験の試験ユニット紹介はこちら

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