Q:
新製品開発のために、材料の引張強度を測定する必要が出てきました。予想では、引張強度は最大で約400Nになりそうです。デジタルフォースゲージの製品型式には「使用最大荷重」という項目がありますが、どの「使用最大荷重」のデジタルフォースゲージを選べばいいのでしょうか。

A:
デジタルフォースゲージ(以下フォースゲージ)における「使用最大荷重」は、測定できる「最大荷重値」を指します。つまり、使用最大荷重が500Nのフォースゲージの場合、測定できる最大の荷重値は500Nになります。
使用最大荷重以上の力がフォースゲージに負荷された状態をオーバーロードといい、その程度によっては「荷重を感知するロードセルの破損=フォースゲージの故障」の原因となってしまいます。それを予防するためには、予想される荷重値よりも使用最大荷重が大きい製品を選ぶことが重要になります。瞬間的なオーバーロードでも故障の原因となりえるため、破壊試験など瞬間的に荷重が上がる測定での使用を想定される場合などは、予想される荷重値の2倍程度の使用最大荷重を持つ製品をお勧めすることも多いです。
では、今回予想される荷重値が約400Nなので、使用最大荷重は500Nではなく1000Nを選べばOKですね!とはならないのが難しいところです。フォースゲージの機種選定には、使用最大荷重以外に精度(と最小表示値)も重要になります。
フォースゲージの精度は、例えば「±0.2%F.S.±1digit」という表記になります。
「F.S.」「digit」など、普段の生活ではあまり目にしない言葉ですよね。
「F.S.」はフルスケールの略でフォースゲージの使用最大荷重を意味します。
「digit」は表示される桁です。1digitというのは、表示できる最小の値を示します。
たとえば、イマダのフォースゲージZTAシリーズの表示は「符号小数点付4桁」となっており、符号(+や-などの記号)、小数点を除いた数字部分が4桁まで表示できます。

使用最大荷重が500Nのイマダのフォースゲージでは、荷重値が400Nだった場合、「400.0N」と表示されます。つまり、小数点第一位(0.1N)まで荷重値を表示できることになります。
こちらが1digit=表示できる最小の値、となります。
フォースゲージの精度が±0.2%F.S.±1digitの場合、測定値の誤差は、使用最大荷重の±0.2%となります。ここに、表示誤差となる±1digitが追加されます。精度から「実際に加えられた荷重と表示値の誤差」を計算してみましょう。
(例)
・フォースゲージの精度は±0.2%F.S.±1digit
・使用最大荷重が500Nのフォースゲージを使用
・小数点第一位まで表示可能
・測定結果(表示値)が400.0N
上記の場合、誤差=±(0.2%×500.0N+1digit)= ±(1.0+0.1)= ±1.1Nとなります。つまり、たとえば400.0Nと表示されている場合、実際の荷重値は398.9N~401.1Nの間のどこかである、ということですね。
以上が精度の説明になりますが、ここで気をつけたいことがあります。
使用最大荷重の異なるフォースゲージでは、仕様上の精度表記が同じでも誤差が異なります。以下に使用最大荷重1000Nのフォースゲージを使った場合で計算してみましょう。
(例)
・フォースゲージの精度は±0.2%F.S.±1digit
・使用最大荷重が1000Nのフォースゲージを使用
・一の位まで表示可能
・測定結果(表示値)が400N
上記の場合、誤差は±3N (±(0.2%×1000+1digit)= ±(2+1)= ±3)となり、400Nと表示された場合、実際の荷重値は397N~403Nの間であることになります。
使用最大荷重が500Nの時の誤差は±1.1N
使用最大荷重が1000Nの時の誤差は±3N
上記のように同じ400Nの荷重値が測定されていても、使用最大荷重が異なるフォースゲージでは誤差の範囲が異なります。そのため、測定の目的や管理レベルによって、許容できる誤差を確認する必要があります。

最後に、フォースゲージと共に使用するアタッチメントの重量に関する注意点を説明します。測定サンプルや用途に合わせて、フォースゲージの先端にアタッチメントを付けて測定を行うことになります。その場合、アタッチメントの重量もフォースゲージにかかる負荷となります。

たとえば、イマダのアタッチメントのA-1(細いサンプルなどをフックで引っ掛けての引張試験にご利用いただけます)の重量は3gです。さきほどオーバーロード(使用最大荷重以上の力がフォースゲージにかかった状態)についてお話しました。例えば使用最大荷重が2Nのフォースゲージを使用している場合、このアタッチメントを付けるだけで約0.03Nの荷重がかかっていますので、2.000N-0.030N=1.970Nを超えた時点でオーバーロードになります。アタッチメントの重量によるフォースゲージにかかる負荷も考えたうえで、オーバーロードが発生しないような使用最大荷重を持つ製品を選ぶ必要があります。
以上、適切なデジタルフォースゲージを選ぶのに必要な使用最大荷重についての説明から、精度の計算方法、選びかたの注意点をご紹介してきました。今回のケースでは、想定荷重値や測定条件・精度などを考慮し、500Nか1000Nの使用最大荷重を選んでいただくことになります。 イマダではお客様のニーズに合わせたフォースゲージ選定も行っておりますので、ご相談されたい場合はこちらからお問い合わせください。

