摩擦試験と摩耗試験は非常によく似ている試験ですが、その目的は大きく異なります。摩擦試験が、摩擦力や摩擦係数の測定を目的とするのに対して、摩耗試験は、摩擦による摩耗量(体積や重量の変化)や物性の変化(摩擦力、摩擦係数、光沢など)の測定を目的とします。本記事では、それぞれの試験の概略を説明しながら、摩擦試験と摩耗試験の違いについて解説します。
なお、摩擦係数測定(摩擦試験)については、下記リンク記事でより詳しく解説をしています。

摩擦試験とは|試験の目的と方法
摩擦試験とは、摩擦力や摩擦係数の測定を目的とした試験です。
- 摩擦力:接触している2つの物体を滑り動かそうとするときに発生する動きを妨げる力
- 摩擦係数:2つの物体の接触面の滑りにくさの指標(摩擦係数が高いほど、高い摩擦力を生み出せる)
材料や部品などを含む製品の滑りにくさは、製造工程での作業性や最終製品の操作性など、さまざまな品質に影響を与えます。そのため、測定された摩擦力や摩擦係数は、品質管理や材料選定などに活用されています。
[摩擦係数の計算方法]
摩擦力は、フォースゲージ(力の測定器)を使用して、実際に材料同士を滑り動かすことで測定が可能です。一方で、摩擦係数は直接的に測定をすることができません。そのため、物体が滑り動く摩擦力を測定した後に、次の計算式をもって計算をする必要があります。
摩擦係数=最大摩擦力(N)/垂直抗力(N)

摩耗試験とは|試験の目的と方法
摩擦力が発生する理由の一つは、物体の表面にある細かな凹凸です。物体の表面にある凹凸同士が凝着や引っかきなどを起こすことが、滑り動くことへの抵抗力に繋がっています。実は、この凹凸同士の凝着や引っかきなどは、ミクロな視点では物体表面の凹凸の破壊を引き起こしています。この物体表面の破壊は摩耗と呼ばれ、表面状態の変化を引き起こします。(摩擦によって発生する熱なども摩耗の原因となります。)

摩耗試験の目的は、上記の要因によって生じる摩耗が物体に与える影響を評価することです。物体への影響とは、たとえば体積や質量、物性(摩擦係数、光沢など)などの変化です。とくに摩耗量(体積やの減少量)は、多くの摩耗試験における観察対象です。具体的には、試験前後での質量や体積の変化を、重量計などを使用して測定します。また、摩擦係数の変化が測定されることも少なくありません。たとえば床材などでは、繰り返しの人間の歩行が生み出す摩耗によって、摩擦係数(滑りにくさ)がどのように変化するかが測定されています。
- 摩擦試験=現時点での滑りにくさの測定(摩擦力、摩擦係数を測定)
- 摩耗試験=摩擦による変化の測定(摩擦前後での体積、質量、物性の変化を測定)
摩耗による物体への影響を測定するためには、当然ながら摩擦による負荷が必要です。摩擦を発生させる方法には、回転式(ピンオンディスク、リングオンディスクなど)や平面往復式などがありますが、ここでは平面往復摺動試験を紹介します。
[平面往復摺動試験]
平面往復摺動試験では、垂直抗力を一定に維持した状態で、繰り返し物体を左右に滑らせて摩擦を発生させます。たとえば、下の画像は木の板と紙やすりを使用した摩耗試験(平面往復摺動試験)の様子です。一定の荷重で木板に接した紙やすりが左右に動くことで、サンプルに摩擦を発生させています。

>>平面往復摺動試験に使用できる摩擦測定ユニットをご覧になりたい方はこちら
参考までに、この試験では、約6cmの距離を50往復させながら、摩擦力の測定を行いました。下のグラフは50往復の間での摩擦力の推移を表しています。グラフの下には、繰り返しの摩擦による摩擦係数の変化も記載しています。(左方向へ移動する際の摩擦力はプラス方向、右方向へ移動する際の摩擦力はマイナス方向で測定をしています)

測定結果からは、摩耗特性に対して下記のような分析をおこなうことが可能です。
- 摩擦により摩耗が発生して表面状態が変化している(1往復目と50往復目で摩擦係数が大きく変化している)。
- 表面状態の変化は初期の摩擦による影響が大きい(摩擦係数の変化量が、摩擦を繰り返すごとに減少している。初期摩耗から定常摩耗に移行していると推察される。)
摩耗試験における注意点
摩擦による摩耗は、接触する双方の物体で発生する点には注意が必要です。
たとえば、先に紹介した「木板と紙やすり」の試験では、木板だけではなく、紙やすりにも摩耗が生じています。そのため、繰り返しの摩擦により摩擦係数が低減したとしても、木板の表面が滑らかになったとは断言ができません。もしも、試験の目的が「紙やすりの研磨性評価」なのであれば、試験前後での木板の変化のみを観察する必要があります。試験前後で人工皮膚との摩擦力・摩擦係数を測定して比較する、などがその一例です。

上図は、紙やすりでの研磨前後に、木板と人工皮膚の摩擦力測定を行ったグラフです。グラフの右側には、研磨前後での摩擦係数の変化も記載しました。試験結果からは、研磨後に摩擦力・摩擦係数が低下していることが確認できます。つまり、研磨によって木板の表面が変化し、より滑らかになったと考えられます。
摩擦試験と摩耗試験の違い(まとめ)
本記事では、摩擦試験と摩耗試験の目的の違いを中心に、各試験の概略について説明をしました。
摩擦試験は滑りにくさ(摩擦力、摩擦係数)の測定、摩耗試験は摩擦による表面状態の変化(摩耗量、物性変化)の測定が目的です。摩擦試験と摩耗試験は、目的の違いを理解して、使い分けることが求められます。
| 摩擦試験 | 摩耗試験 | |
|---|---|---|
| 試験の目的 | 滑りにくさの測定 | 摩擦による表面変化の測定 |
| 測定する指標 | 摩擦力、摩擦係数 | 体積、質量、物性(摩擦係数など)の変化 |
| 試験の動作 | 単発での摺動(滑り合う運動) | 繰り返しの摺動 |
なお、摩擦試験と摩耗試験は、試験の動作自体は非常に似ています。そのため、摩擦試験と摩耗試験が同時に行われることも少なくありません。また、測定対象によっては、摩擦試験機で摩耗の測定ができる場合もあります。
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