CEマーク取得におけるフォースゲージの活用事例

目次

CEマークとは?

CEマークは、製品をEU加盟国へ輸出する際に、安全基準条件(使用者・消費者の健康と安全および共通利益の確保を守るための条件)を満たすことを証明するマークです。スマートフォンの背面などにもよく見るとCEマークがあります。スマートフォンのような電気製品をはじめ、機械、おもちゃなどをEU加盟国に輸出する際には「安全の証」であるCEマーク貼付の義務があります。イマダの一部製品もEU指令の要求事項に適合していることを表すCEマークを表示し、EU加盟国へ輸出をしています。

どんな検査がある?

CEマークを表示するために考慮が必要な指令は、EMC指令、低電圧指令、RoHS指令、機械指令であり、各指令に適合しているか否かを整合規格によって判定を行います。弊社では、機械指令への適合を判断するため、整合規格として「IEC 61010-1」を用いています。このIECというのは国際規格であり、日本国内でいうJIS規格のようなものです。つまりどちらも、産業製品に関する規格や測定法などが定められた公的規格のことを意味します。

イマダ製品も活躍します

“「IEC 61010-1」の7.4項 Stability”の中に、イマダの荷重測定機器(フォースゲージ)を活用できる検査項目があります。IECは英文ですので、翻訳された相当版の“「JIS C 1010-1:2019」7.4項 安定性”をもとに、フォースゲージを活用してどのような検査がなされるのか紹介したいと思います。

”7.4項 安定性”で活用できるフォースゲージ:イマダ製デジタルフォースゲージZTSシリーズ
(手で持って押したり引っ張ったりする力を測定したり、専用のスタンドと組み合わせて簡易試験機として使用することができる機器です。)

( i ) ”「JIS C 1010-1:2019」7.4項 安定性”の検査概要とフォースゲージ活用事例

ここからは、”「JIS C 1010-1:2019」7.4項 安定性”の検査をどのように行っていくのか説明します。

今回は検査対象の例としてイマダ製電動計測スタンドEMX-500N-Lを挙げます。こちらのスタンドは、CEマークの表示申請を行い、実際に承認を得た製品です。その際に、”7.4項 安定性”においてももちろん検査をしたので、その様子を事例として紹介します。

まずは、該当項目の冒頭を見てみましょう。(青字:規格の引用・黒字:要約と解説):

7.4 安定性
建築構造物に固定していない機器及び機器のアセンブリは,動作させる前に,物理的に安定していなければならない。操作者が引出しなどを開けた後,安定性の維持を確保するための手段を備える場合には,その手段は,自動的であるか,又はその手段を採るための警告表示をするかのいずれかでなければならない。 各キャスタ及び各支持用脚は,通常の負荷以上の負荷を支持する定格でなければならないか,又は次のd)若しくはe)によって,そのキャスタ及び支持用脚を試験しなければならない。 適合性は,検査,及び該当する場合には,機器が平衡を失わないことを確かめるために,次のa)〜e) の試験によって確認する。容器には,正常な使用で最も不利な条件となる定格量の物質を入れる。キャスタは,正常な使用で最も不利な位置にする。扉,引出しなどは,次のa)〜e) に規定していない限り閉じておく。

難しく感じますが、ポイントは以下の3点です。
・簡単に転倒するような構造であってはならない
・機器の脚部分は、通常の負荷以上の負荷に耐えられなければいけない
・試験は正常な使用範囲の中で、最も不利な条件で行う

次にa)~e)の具体的な試験方法が続きます。


a) 手持形機器以外の機器は,その正常な位置から10°の角度で各方向に傾ける。

これは、手で持って使用する機器を除き、10度傾けた状態を評価するということです。角度計を用いて10度傾け、平衡を保つことができるかを確認します。
EMX-500N-Lは卓上に置いて使用する機器ですので、「手持形機器以外の機器」に該当し、確認の必要があります。

具体的には、10度傾けた状態から手を放し、傾けた方向へ転倒することなく元の位置へ戻る(10度傾けた状態から傾けた方向に転倒しない)ことを確認し、平衡を保てることを確認しています。
(他にも、10度に傾けた状態で木の板などを噛ませて手を離し、転倒することなく平衡を保てるか確認するという方法でも問題ありません。)


b) 高さ1 m以上で,かつ,質量25 kg以上の機器及び全ての床設置形機器は,最上部に力を加える。高さ2 mを超える機器の場合は,2 mの高さの部位に力を加える。力は,250 N又は機器の重量の20 %のいずれか小さいほうとし,その機器を傾けることができる方向に,全ての表面に対して加える。このとき,正常な使用中に用いる安定装置,及び操作者が開けることを意図する扉,引出しなどは,最も不利な位置にする。

ポイント:
・機器のサイズによって、力を加える場所が異なる
・250Nまたは機器の重量の20%(小さい方のどちらか)の力で機器を傾けることができる全方向から押す

 → 機器の重量の20%の力とは、何Nになるのでしょう?EMX-500N-Lを例に考えてみます。
EMX-500N-Lの重量は約22kgです。その20%の重量は、4.4kgになります。これをNに換算する必要があります。
重さを表すkgと力を表すkgfは、それぞれ表す対象が異なるため厳密に言えば変換ができないのですが(kgとcmを変換できないのと同じ)、地球上では結局のところ示す数値は同じになります(1kg=1kgf)。ですので、ここでは、4.4kg=4.4kgfとします。
1kgf ≒ 9.8N(約10倍)ですので、4.4×10=44Nとなります。つまり、44NがEMX-500N-Lの20%に相当する力となります。
これでかける力はわかりました。では、どのようにして44Nの力を機器にかければ良いのでしょうか?ここでイマダ製フォースゲージの出番です。

イマダ製デジタルフォースZTSシリーズ

フォースゲージとは、改めて紹介しますと、押したり引っ張ったりする力を測定する機器です。まさにここで求められている、機器を押す力を数値で表示することができます。つまり、フォースゲージの表示が44N以上になるまで機器に押し当て、転倒しないかを確認すれば良いということです。

 → では、どこからどの方向に力をかければ良いのでしょうか?

EMX-500N-Lは、94.8cmで1m以下ですので、本来この試験対象ではありません。
しかしイマダでは、1m以内であっても比較的1mに近い高さのある製品においては、自主的に試験対象とし、最上部を押しても転倒しない安全な状態であることを検証しています。
具体的には機器を傾ける全方位として下図に示す4方向を定め、44Nの力を加えても平衡を保つことを確認します。

↓ 最上部を前から押した様子。 44Nを超えた力(写真上では47.8N)で押していても傾いていないので合格と言えます。


c) 床設置形機器は,次の1) 及び2) に示す表面の最大モーメントの点で,下向きに800 Nの力を加える。 」
1) 全ての水平の作業表面
2) 床面から1 m以下の,明白な棚を備えた1)以外の表面
  扉,引出しなどは,閉じておくが,操作者が開けることを意図するものは,最も不利な位置にする。

床設置型で最大モーメントの点に800Nというのは、例えば以下のようなところに負荷をかけるという形がイメージできます。


d) 最大負荷(M)を支えるキャスタ又は支持用脚に,最大負荷の4倍の負荷(4M)を加える。

機器の仕様として最大許容負荷が100Nの場合、4倍の400Nの負荷をかけて耐えられるか確認するということです。(例えば4つ足があって、1か所に重量が集中して加わっても破損しないかを確認するという意図だと考えられます。)
EMX-500N-Lにはキャスタなどはついていないために該当しません。


e) 最大負荷を支えるキャスタ又は支持用脚を機器から取り除き,機器を平らな表面に配置する。
注記 試験実施者のハザードになり得る場合は,試験中,その機器が完全に転倒しないように保持しておくことが望ましい。ただし,この保持がそのユニットが不平衡であるかどうかの決定を妨げないようにする。

→キャスタや足がない状態(脱落した状態)で平面に置いたときにも、倒れることがないか?ということも確認する必要があるという事です。(例えばスタンドの底がお椀のように丸くなっている場合、足を取ったら倒れてしまいますので、そういう事がないか?という意味です。)
EMX-500N-Lにはキャスタなどはついていないために該当しません。

( ii ) 検査結果

EMX-500N-Lは、該当するa)と自主的にb)の項目を検査し、以下のような結果になりました。

試験項目判定基準方向判定結果備考
7. 4. a)10度傾けても
平衡を失わない
全方位転倒無し合格
7. 4. b)所定の箇所に力を加えても
平衡を失わない
(重量の20% 44N)
前から転倒無し合格傾き始めた際の力:66.0N
後ろから転倒無し合格傾き始めた際の力:75.0N
左右から転倒無し合格傾き始めた際の力:53.6N

また、検査結果を数値で表すだけでなく、エビデンスとして検査結果を写真で記録することも求められます。

出典 JIS C 1010-1:2019 7.4項 安定性

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