剥離試験紹介① 『180度剥離試験、90度剥離試験』

目次

粘着、溶着の強さを測る剥離試験

皆様は、剥離試験という試験をご存じでしょうか?その名の通り、テープや接着剤を引き剥がす時に必要な力=剥離力(粘着力)を測定する試験であり、「十分な強さでくっついているか」「簡単に剥がすことができるか」など、様々な目的で実施をされている試験です。

大まかには、くっついているモノを引き剥がして、その時の抵抗力を測るという試験なのですが、サンプルや目的、規格などにより様々な試験方法が用いられています。例えば、以下に記載した試験方法は、剥離試験で用いられる代表的な試験方法です。

  • 180度剥離試験
  • 90度剥離試験
  • 45度剥離試験
  • T型剥離試験
  • 付着性試験(プルオフ法)

今回は、これらのなかでも、粘着テープや粘着シートの剥離力測定に用いられる試験である「180度剥離試験」「90度剥離試験」について、その試験方法を紹介いたします。180度剥離試験、90度剥離試験は、数ある剥離試験方法のなかでも比較的シンプルな試験方法であり、多くのラベルメーカーでも実際に採用をされている試験方法です。

(180度剥離試験、90度剥離試験以外の試験方法は下の記事にて紹介しています。)

>> 剥離試験紹介② 『45度剥離試験、T型剥離試験』
>> 剥離試験紹介③ 『塗膜剥離試験』

180度剥離試験

最初に紹介をするのは「180度剥離試験」です。180度剥離試験は、接着面に対して180度の方向に粘着テープを引き剥がして測定を行う試験方法です。JIS Z 0237;2022(粘着テープ・粘着シート試験方法)では、「テープ背面が重なるようにテープの端を持って180度に折り返し」と表現されています(下図参照)。測定器が上方向へ移動することにより、ステンレス板に貼られた粘着テープが剥がれ、その剥離力を測定します。また、厳密には180度ではないものの、横型の試験機を使用して180度剥離試験に近い測定を行うことも可能です。

180度剥離試験は、その容易性もあり、剥離力の試験方法として多くのラベルメーカーに採用をされています。一方で、「計測スタンドに長いストロークが必要」「固いテープ、厚みのあるテープには向かない」などのデメリットもあり、サンプルに応じて90度剥離試験と使い分けている企業も多いようです。

90度剥離試験

続いては「90度剥離試験」の紹介です。180度剥離試験と90度剥離試験では、粘着テープを引き剥がす方向が異なります。90度剥離試験では、接着面に対して直角にサンプルを引き剥がして測定を行います(下図)。やや複雑な治具(スライド機構を持ったテーブル治具)が必要であり、粘着テープを引き剥がしながら測定器が上方向に移動するにつれて、テーブルがスライドして90度の剥離角度を保ち続けます。90度剥離試験は、180度剥離試験と比較すると、幅広いサンプルの測定に対応ができ、短いサンプルでも長い接着面を確保することが可能です。

なお、180度剥離試験を含めて、測定結果はテープ幅の影響を受けるため、その影響を取り除いた剥離力単位:〇〇N/10mmに換算して表示するのが一般的です。剥離力N/10mmは、測定結果とサンプル幅からする換算ことが可能です【測定値(N)×10/テープ幅(mm)=〇〇N/10mm】。※10mmの部分は規格などにより数字が変わります。

180度剥離試験と90度剥離試験の比較

ここまで、180度剥離試験と90度剥離試験について紹介をしてきましたが、その特徴をまとめたのが下記の表です。(どちらの試験方法を採用するかについては、①サンプル、②規格、③実使用時の剥離方法、④企業・業界のルールや慣例など、様々な要因に因るため、例えば、取引先への品質保証などの場合には、取引先への事前確認をお勧めします。)

また、剥離力を比較する際には、試験方法を統一することにも注意が必要です。下のグラフは、同じ粘着テープを2つの試験方法で測定した結果を示したグラフですが、数値に大きな違いがあることが見て取れます。

JIS Z 0237;2022に則った剥離力の平均値は、180度剥離試験で1.11N/10㎜、90度剥離試験で1.46N/10mmと、その差は1.3倍以上あります。また、90度剥離試験では、剥がし初めにより大きな抵抗力が発生していることがグラフより見て取れます。

上の例はあくまで一例であり、実際にはサンプルの特性により「180度剥離試験の測定値が90度剥離試験の測定値を上回る」ということも起こりえます。そのため、剥離力の比較時には、試験方法を統一して、比較や品質管理を行うことが重要です。

まとめ

さて、今回は剥離角度の異なる2つの試験を紹介しました。今回紹介した試験は、どちらも粘着テープ・粘着シートを対象とした試験でしたが、冒頭でもお伝えしたとおり、剥離試験には菓子袋や塗膜など、様々なサンプルを対象とした試験方法が存在します。第2回、第3回の記事では、「45度剥離試験」「T型剥離試験」「塗膜剥離試験」についても、紹介をしています。また、フォースチャンネルでは、荷重測定やチカラに関する様々な記事をお届けしています。是非、他の記事もチェックしてみてくださいね。

>>粘着テープの90度剥離試験(ピールテスト)動画(イマダ製品・サービスサイト)

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