今回は、愛知工業大学 工学部 応用化学科 福森健三教授の研究内容に関するご紹介です。
福森教授は、高分子材料に関する研究をおこなっており、イマダでは2022年より恒温槽を使用した荷重測定機器の貸し出しによる研究のサポートをさせていただいております。
今回下記論文の一部試験にてイマダの荷重測定機器をご使用いただきました。
- 多層CNT 分散制御オレフィン系動的架橋熱可塑性エラストマーの力学物性、成形加工(プラスチック成形加工学会誌), Vol.36, No.3, 121-127 (2024).
- オレフィン系動的架橋熱可塑性エラストマーの相構造制御および多層カーボンナノチューブ分散制御による力学物性向上、日本ゴム協会誌, Vol.97, No.5, 112-118 (2024)
※ともに廣瀬威仁大学院生、福森健三教授の共著
上記の論文では、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を分散させた新規熱可塑性エラストマーの開発と力学物性の評価をおこなっており、イマダ製品はリング状試験片の引張強さ(破断真応力)と破断伸長比(破断ひずみ+1)を算出するための引張試験に使用されています。
一般に架橋ゴムは、高伸長性・変形回復性の特長をもつゴム弾性を示し、さらに汎用的な補強充塡剤であるカーボンブラックを数10%配合することにより、弾性率、引張強さなどの力学物性を大幅に向上させて製品化されることが知られています。しかしながら、架橋ゴムは三次元網目構造をもつため,マテリアルリサイクルが困難な材料に位置づけられています。そこで近年、ゴム弾性を示す約80%の架橋ゴム相が、弾性率および強度を受けもつ熱可塑性樹脂の連続相中に数マイクロメートルの大きさで分散した相分離構造を有することにより、架橋ゴムと同等な力学物性と優れたリサイクル性を示す熱可塑性エラストマー(Thermoplastic elastomer: TPE)が、架橋ゴムの代替材料としての採用を進められています。
福森教授は、TPE製品の適用拡大に資する系の力学物性向上を目的とし、架橋ゴム分散相に少量の添加量で補強効果が期待できる「多層カーボンナノチューブ(Multi-walled Carbon Nanotube: MWCNT*1)」に着目し、その分散制御に関する研究に取り組まれているそうです。上記論文では、TPE中の架橋ゴム分散相を数100ナノメートルの大きさに微細化し、さらに架橋ゴム分散相に多層CNTを局在化させることにより、わずか0.5%の添加量で力学物性が大幅に向上することを報告されています。
*1 MWCNT:炭素原子が六角形に結合したハニカム状のグラフェンシートを多層の筒状に丸めた構造をもつ高機能ナノ粒子
熱可塑性エラストマーは、ゴム弾性を持つ一方で、加熱することで流動するため、再成形が容易に可能な素材です。その再成形の容易さから優れたリサイクル性を有しており、架橋ゴムの代替素材としての適用が徐々に増加しています。さらなる、利用の拡大においてはリサイクル性を失わずに力学物性を向上させることが求められています。
福森教授は、バイオベースのエラストマーの研究にも取り組まれており、こちらの研究でもイマダ製品をご使用いただいているそうです。今回論文でご使用いただいた機器は、貸し出し機器とは異なるものですが、(貸し出し機器を使用した実験は進行中とのこと、)イマダとしても研究へのサポートを通して環境保護に貢献をしていきたいと思います。
なお、今回の記事作成にあたり、福森教授にインタビューや写真撮影のご協力をいただきました。試験条件の検討方法など、記事に関すること以外にも多くの知見をいただき、改めて深くお礼を申し上げます。
イマダでは、荷重測定による課題解決に関する共同研究を推進しています。ご興味のある研究者の方は、ぜひ下記URLよりご連絡ください。