剥離試験紹介③ 『塗膜剥離試験』

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塗料の密着性を測る剥離試験

剥離試験を紹介しているこの連載記事では、ここまで90度剥離試験やT型剥離試験など、様々な剥離試験方法を紹介してきました。最終回となる第3回の今回は、塗料・塗膜の評価に用いられる剥離試験として、「付着性試験(クロスカット法)」と「付着性試験(プルオフ法)」を紹介します。

>> 剥離試験紹介①『 90度剥離試験、180度剥離試験』

>> 剥離試験紹介②『45度剥離試験、T型剥離試験』

塗装には、保護や美観、機能付与といった様々な役割があります。それぞれの役割に対して塗料を評価することは非常に重要なことですが、簡単に塗膜が剥がれてしまっては、その役割を果たすことはできません。そのため、塗膜の付着性、密着性を評価する試験は、塗料メーカーではもちろん、塗装を行う多くの製造業の企業でも実際に採用をされています。そこで今回は、その試験方法について紹介します。

付着性試験 クロスカット法

最初に紹介をするのは「付着性試験(クロスカット法)」です。クロスカット法は碁盤目試験とも呼ばれる試験方法で、塗料業界では古くから使われている試験方法です。試験方法は、①塗装したサンプルに格子状の切り込みを入れる ②粘着テープを貼り付けた後に剥がす ③塗膜の状態を確認する というシンプルな方法です。

クロスカット法の評価は、テープ剥離後の塗膜状態に応じて分類分けをして、塗膜同士を比較するのが一般的です。クロスカット法は、塗装現場でも簡単にできる手軽さから、様々な場面で使用をされています。一方で、試験結果に関しては、付着以外の要因にも左右されることから、JIS K5600-5-6:1999 (塗料の一般的試験方法 第5部:塗膜の機械的性質―第6節:付着性(クロスカット法))では、クロスカット法を「付着性の測定手段としてみなしてはならない。」と述べられています。

【クロスカット法の特徴】

・塗膜に格子状の切込みを入れ、粘着テープで剥離した後に塗膜状態を評価。

・試験の手軽さから、塗装現場などで、簡易的な試験方法としても使用される。

・試験結果は塗膜の状態に応じて分類分けを行い、合否判定や比較評価を行う。

・JIS K5600-5-6:1999では「付着性の測定手段としてみなしてはならない。」との記載あり。

付着性試験(プルオフ法)

続いては「付着性試験(プルオフ法)」の紹介です。プルオフ法も、クロスカットフ法と同じく、塗膜の付着性を評価する試験方法であり、JIS K5600-5-6:1999では、付着性の評価にはプルオフ法の規格であるJIS K5600-5-7:1999 (塗料の一般的試験方法 第5部:塗膜の機械的性質―第7節:付着性(プルオフ法))を参照するように推奨されています。プルオフ法では、接着剤で塗膜に治具を貼り付け、荷重測定器で垂直に引っ張ることで、塗膜の剥離に必要な力を測定します。剥離力が数値化されることにより、塗膜の付着性を定量的に評価することが可能です。

プルオフ法は、測定器や接着剤の性能にはよるものの、クロスカット法と比べて、低荷重帯~高荷重帯の剥離力(付着性)の測定、微細な剥離力(付着性)の違いを評価できます。例えば、クロスカット法では、2つの試験サンプルの試験後の塗膜状態が目視で同等であった場合、付着性を同等と評価するのに対して、プルオフ法では、試験時に発生した剥離力が数値で表されることで付着性の比較を行うことが可能です。

一方で、①測定器、計測スタンドが必要であること、②測定の容易性に劣ることより、塗装現場での測定には向いておらず、状況に応じてクロスカット法と使い分けをされています。

【プルオフ法の特徴】

・接着剤に塗膜で治具を貼り付け、荷重測定器で引っ張ることで剥離力を測定。

・剥離力が数値化されることにより、主観性を排除して塗膜の付着性の評価が可能。

・クロスカット法と比べて、幅広い荷重帯の試験ができ、微細な剥離力の違いを評価可能。

・試験に際して、測定器や計測スタンドが必要。

・試験ごとに新しい試験円筒の用意、もしくは接着剤の除去が必要。

※プルオフ法の実際の測定の様子はこちらからご覧いただけます。

まとめ

今回は、塗料・塗膜の付着性評価に用いられる試験方法として、クロスカット法とプルオフ法を紹介しました。2つの試験は、それぞれに違ったメリットを持つ試験方法であり、目的に応じて適切な試験方法を選択していくことが重要です。

シリーズとして連載してきた「剥離試験紹介」の記事は今回で終わりとなりますが、剥離試験に興味を持っていただくことはできたでしょうか。イマダのHPでは、今回紹介できなかった剥離試験の事例動画を多数公開しています。また、フォースチャンネルでも、荷重測定やチカラに関する様々な記事をお届けしています。是非、チェックしてみてくださいね。

※剥離試験の測定事例動画はこちらからご覧いただけます。

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