粘着テープの粘着力測定における剥離角度、試験速度の影響について

粘着テープの粘着力測定では「90度剥離試験」や「180度剥離試験などの測定方法がよく知られていますが、どの測定方法を選ぶべきかと悩まれる方も多いかもしれません。本記事では剥離角度試験速度による測定結果への影響について明らかにすることを目的に、複数条件にて粘着力測定を行った結果を紹介します。

目次

剥離角度による測定結果への影響

剥離角度とは、粘着テープの接着面に対する引き剥がし方向の角度を意味します。たとえば、接着面に対して垂直に引っ張り剥がす場合の剥離角度は90°、接着面に対して180°折り返して剥がす場合の剥離角度は180°と表現されます。

今回の測定では、複数の粘着テープに対して剥離角度45°/ 90°/ 135°/ 180°で粘着力の測定を行いました。試験速度は剥離速度が300mm/minとなる速度設定にて、約100mmの長さを剥離した後、剥離距離25~75mmの区間の粘着力の平均値を計算しています。また、計算した粘着力の平均値は、N/10mmの単位に換算をしています(平均荷重値(N)/サンプル幅(mm)×10mmにて計算)。

試験条件と各剥離角度での粘着力測定(左から45°/ 90°/ 135°/ 180°)

各剥離角度での測定結果は以下のとおりです。あくまで今回測定したサンプルにおける結果のみではありますが、剥離角度の違いによる粘着力の増減については一定の傾向が見られます。

剥離角度45°90°135°180°
ビニールテープ2.777N/10mm1.924N/10mm1.445N/10mm2.034N/10mm
マスキングテープ1.642N/10mm0.736N/10mm0.578N/10mm1.220N/10mm
セロハンテープ7.932N/10mm2.872N/10mm2.966N/10mm4.296N/10mm
粘着テープの粘着力測定結果
  • いずれのサンプルにおいても、剥離角度45°で測定したときの粘着力が最も大きい。
  • 剥離角度45°から角度が大きくなるにつれて粘着力は低下するが、一定の角度を越えると再び粘着力は上昇する。とくに剥離角度45°~90°における粘着力の低下が目立つ。
  • 剥離角度90°/ 180°の比較では、剥離角度180°で測定したときの方が粘着力が大きい。
  • 剥離角度による粘着力への影響の程度はサンプルによる差が大きい。

試験速度による測定結果への影響

続いて試験速度による粘着力への影響を検証した結果を紹介します。剥離試験に関する規格では、試験速度が300m/minや600mm/minに定められていることが多いですが、今回は50mm/min、300mm/min、600mm/minの試験速度にて測定を行いました。なお、試験条件については、試験速度以外の試験条件は先に記載した試験条件のままに、剥離角度は90°/ 180°に絞って測定を行っています。

[剥離角度90°の場合]

試験速度50mm/min300mm/min600mm/min
ビニールテープ1.191N/10mm1.924N/10mm2.738N/10mm
マスキングテープ0.446N/10mm0.730N/10mm0.866N/10mm
セロハンテープ2.050N/10mm2.872N/10mm3.379N/10mm

[剥離角度180°の場合]

試験速度50mm/min300mm/min600mm/min
ビニールテープ0.853N/10mm1.540N/10mm2.034N/10mm
マスキングテープ0.438N/10mm0.804N/10mm1.220N/10mm
セロハンテープ2.269N/10mm3.566N/10mm4.296N/10mm

※剥離角度180°の試験では、折り返しの影響により剥離速度は試験速度の1/2になります。

測定結果からは、剥離角度に関わらず試験速度が速くなるほどに粘着力が大きくなっていることがわかります。また、グラフを確認すると、試験速度が高まるにつれて測定値が不安定になっていることが見て取れます。原因としては、計測スタンドの振動などが考えられるため、たとえば平均値ではなく、区間内の最小荷重値などを比較したい場合には、低速での試験結果を用いるのが良いかもしれません。

測定値が不安定になる要因には、振動以外にも「試験片を貼り付けたプレートの傷や汚れ」、「貼り付けた際の気泡」、「サンプルの粘着力の不均一性」などがあります。たとえば、上記のグラフからは、試験速度600mm/minのときのセロハンテープの測定値がとくに不安定であることが見て取れますが、今回測定したセロハンテープでは筋状の気泡が入りやすく、この気泡が瞬間的な荷重値の揺れの原因となっていると考えられます。(画像はイメージです。実際の測定では、できる限り気泡が入らないようにサンプルの貼り付けを行っています。)

まとめ

今回の記事では、剥離角度や試験速度による粘着力測定への影響について、実際の測定結果事例を紹介しました。紹介した事例は、あくまで使用したサンプルに限った結果ではありますが、ひとつの参考値としてご活用いただければと思います。

今回紹介したとおり、荷重測定の結果は試験条件の影響を大きく受けることが少なくありません。剥離角度や試験速度以外にも、たとえば温度などの測定環境も測定結果に影響を与える要因の1つです。Force Channelでは現在、ヒーターテーブルを利用して、温度による粘着力測定への影響の検証も進めています。検証が完了次第、本記事に情報の追加も行いますので、ぜひチェックしてみてください。

以上、粘着テープの粘着力測定における剥離角度、試験速度の影響についての紹介でした。

>>測定事例動画 粘着テープの90度剥離試験

>>測定事例動画 粘着テープの180度剥離試験

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